• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

ミクロネシア信託統治の始原期に関する研究―委任統治からの移行と植民地社会の再編

研究課題

研究課題/領域番号 23510330
研究機関法政大学

研究代表者

今泉 裕美子  法政大学, 国際文化学部, 教授 (30266275)

キーワードミクロネシア / 植民地社会 / 信託統治 / 委任統治 / 復興 / 引揚げ / 太平洋戦争 / 移民
研究概要

国内における史・資料収集は、昨年度から引き続き戦時南洋群島に関係する外務省、軍関係の史・資料をインターネットのデジタル版を含めて調査し、手元にある史・資料との比較、分析を進めた。古書店を通じて、貴重資料を購入した。個人所蔵の史・資料については、パラオ諸島とロタ島を中心に複写しえた。国内調査では沖縄、北海道、国外調査ではサイパン、テニアン、ポーンペイを予定していたが、後記の「現在までの達成度」に記した事情で以下のような実施状況となった。
聴取りは昨年度から引き続き沖縄と本土で次のように実施した。沖縄では南洋群島帰還者会の行事、サイパン会、テニアン会に参加して本研究課題に関係するインフォマントを探し、取材を行ったほか、サイパン高等女学校、パラオ高等女学校、サイパン実業、パラオ中学の同窓生を中心に取材した。本土では南洋興発㈱関係者による南興会、サイパン高等女学校同窓会を中心に個人の聴取りを実施した。
海外調査は計画通りには実施できなかったものの、インターネットを通じて現地調査の情報交換をしたことに加え、第一回マリアナ諸島歴史会議(The 1st Marianas History Conference 、2012年6月14日-16日、於米自治領北マリアナ諸島サイパン島)に参加、研究報告を行い、マリアナ諸島内外の研究者と旧南洋群島全域に本研究課題に関する情報交換を行った。
以上の調査から、本年度はパラオ諸島、ロタ島を中心とした旧南洋群島の史・資料の整理、分析を行い、聴取りで史・資料の諸事実を確認すると同時に、史・資料に見出せない貴重な情報を得た。以上の成果は、既述のマリアナ諸島歴史会議、日本移民学会ワークショップ、文化人類学研究者との研究交流で研究報告を行って検討を深めたほか、日本植民地研究会、日本移民学会に所属する研究者たちと意見交換を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

遅れているのは主に聞き取りや現地視察を伴う海外調査計画であり、研究内容については「おおむね順調に進展している」。「概ね順調」とする理由は、①後述の「今後の研究の推進方策」に記したように、史・資料が予想以上に僅少であり、発掘には時間をかけざるをえないこと、②本研究課題に関連する先行研究のもつ問題点が、この二年間の作業を経てより明確になったことであり、むしろそれが大きな成果とも言えること、③国内外で積極的に研究報告したことで①、②が確認でき、さらに本研究課題の重要性、独自性について国内外の研究者からも評価を得たこと、である。改善策は「今後の研究の推進方策」を参照のこと。
調査については、今年度はやむを得ぬ事情、すなわち身内の入院者の介護および報告者自身の入院による。予定していた海外調査の場所と期間の変更にあたっては、今年度の研究対象として重点をおく予定であった島嶼を変更したり、海外での研究報告の機会を活用しての情報収集、あるいは国内での調査、インターネットを通じて情報交換に努めた。この努力により、当初の計画としては「遅れた」ものの、研究内容としては着実に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

本研究課題の開始年度には、平成25年度は国内外の文献調査、聴き取り調査は、戦争直後からサンフランシスコ講和条約締結までの時期に重点をおくこと、また前年度の取材機関・対象について継続し、特に、”non-native people”については引き揚げ後、”native people"はミクロネシアへの再定住、生活再建について取材するとしている。
ただし、研究機関4年間のうち今年度まで2年間の研究から次のことが判明し、当初の研究計画に調整が必要となった。具体的に述べれば、日本統治下ミクロネシアの戦時、とりわけ米軍占領下について、アメリカ軍および日本政府の政策に関する文書、兵士、民間人の生活実態については予想以上に情報、史料が見つかりにくいことである。なかでもミクロネシア住民についてはさらに情報、史料が少ない。当該時期の先行研究としては、アメリカの信託統治政策立案に参加した文化人類学者を中心とする研究や調査書があるものの、個々の事例の裏付け、とくに日米の政策との関係、また聞き取った内容や引用されている史・資料分析を必ずしも十分行っていない。その最大の理由のひとつは、日本側の情報の欠如と、軍史料には戦略・戦術上の情報が優先されていることによる。また既存の研究では、分析方法の問題として、日本統治時代の政策の戦時の特徴、それが米軍占領下でどう変化したか、否かの分析は著しく不足している。
本年度、韓国および米自治領マリアナ諸島で海外の研究者と交流をした結果、本研究課題の独自性と重要性、また報告者が独自に発掘してきた史・資料の重要性、および調査方法の適切さが改めて確認できた。よって、今後もさらに資・史料調査を続けながら、アメリカや韓国の先行研究の整理を引き続き進め、報告者が蓄積してきた史・史料調査の方法、本研究課題の時期、対象の分析視点と方法のさらなる精緻化を進めたい。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] "Carolinian and Chamorros in Japanese Mandated NMI: A Review of Tadao Yanaihara's Studies on Micronesea."2012

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Imaizumi
    • 雑誌名

      E-publication(http://issuu.com/guampedia/docs/marianas_late_colonial_history/1).The 1st Marianas History Conference: One Archipelago, Many Stories,Late Colonial History,Part five of seven.

      巻: 5 ページ: 43-62

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 旧南洋群島における朝鮮人の戦時労働動員2012

    • 著者名/発表者名
      今泉裕美子
    • 雑誌名

      『在日済州人センター開館記念シンポジウム予稿集』

      巻: 巻号なし ページ: 32-46

  • [学会発表] "Carolinian and Chamorros in Japanese Mandated NMI: A Review of Tadao Yanaihara's Studies on Micronesea."

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Imaizumi
    • 学会等名
      Marianas History Conference-One Archipelago, Many Stories
    • 発表場所
      Fiesta Resort and Spa, Garapan, Saipan、CNMI(Commonwealth of Northern Mariana Islands:米自治領北マリアナ諸島)
  • [学会発表] 旧南洋群島における朝鮮人の戦時労働動員

    • 著者名/発表者名
      今泉裕美子
    • 学会等名
      在日済州人センター開館記念国際学術会議
    • 発表場所
      済州大学在日済州人センター(韓国済州島)
    • 招待講演
  • [学会発表] ①「問題提起」②「パラオ諸島における『引揚げ』(1943~46年)」

    • 著者名/発表者名
      今泉裕美子
    • 学会等名
      日本移民学会2012年度ワークショップII
    • 発表場所
      法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎5階S505(東京都)
  • [備考] 第一回マリアナ諸島歴史会議論集

    • URL

      http://issuu.com/guampedia/docs/marianas_late_colonial_history/1

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi