研究課題/領域番号 |
23510332
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
見山 謙一郎 立教大学, ビジネスデザイン研究科, 准教授 (70600386)
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キーワード | バングラデシュ |
研究概要 |
平成24年度は、バングラデシュのマイクロファイナンス機関であるグラミン銀行とBRACが手がけるソーシャルビジネスについて「金融」という観点からヒアリング調査を行った。グラミン銀行については、農村部の貧困層に対しヨーグルトを製造販売するグラミンダノンや、女性用下着を製造販売するグラミンユニクロなどの金融機能を介在させない海外企業との合弁型ソーシャルビジネスが、当初の思惑通りに行かず、都市部に進出することを余儀なくされている一方、バングラデシュの未電化農村に太陽光パネルを設置するグラミンシャクティのプロジェクトは、国の機関からの低利融資を受け、農村の住民向けに割賦販売という金融の仕組みを活用し大きく拡大させていることが明らかとなった。 世界最大のNGOであるBRACについては、マイクロファイナンスからの卒業組みであるMOP(Middle of the Pyramid)層や中小企業に対し金融支援を行うBRAC銀行にヒアリング調査を行った。マイクロファイナンスが農村の貧困層に対する自立のための金融支援であるのに対し、BRAC銀行は、MOP層や中小企業の自立に特化する金融機関であり、設立後約10年にしてバングラデシュの上位10位に入るまでの銀行となっている。BRAC銀行の成功は、他の商業金融機関をMOP層、中小企業に対する融資へと駆り立てる原動力となっており、同国の自立的発展のための基盤強化に繋がっている。 また、米国のコーネル大学大学院に招かれ、調査研究の成果をシェアするとともに、開発支援を実践的アプローチから研究する教員と共同研究に向けた情報交換を行った。また、同大学院に学ぶアジアからの留学生向けに講演を行った。 日本の地域金融機関については、総務省の地域活性化アドバイザーや、地方銀行のアドバイザーとして多くの具体的事例に直接関与しており、本研究調査で得た知見との相対化が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査については、グラミン銀行グループのグラミンシャクティや、BRACグループのBRAC銀行の実務者や責任者に対し、直接インタビューすることができ、最新の貴重な情報を入手することが出来た。 また、バングラデシュのトップ私立大学であるノースサウス大学の教授や、コーネル大学の教授など、多くの他国研究者とのネットワークを構築し研究成果の意見交換を行なえたことは、今後の自らの研究基盤を強化することに繋がる非常に意義あるものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成25年度は、時系列に行っている現地調査を継続実施し、体系化を図る。また、これまでの調査実績を踏まえ、当初研究の目的である、バングラデシュの「自立的発展」に向けた、ビジネスセクターと、非営利セクターのアプローチの比較研究を整理するとともに、「自立的発展」に不可欠な「金融」の役割を明らかにする。そして、本研究のインプリケーションとして、バングラデシュにおける金融機能を活用した自立的発展モデルが、日本の地方経済にどのように活かすことが出来るかも明らかにして行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
バングラデシュ現地調査の為の渡航費、現地での通訳等人件費等が主なものである。 また、平成24年度に招かれたコーネル大学大学院等、他国の研究者とのセッションについても、可能な範囲で実施したいと考えている。 次年度使用額(177,416円)が生じた理由は、円高による交通費単価の差異が主なものであるが、現地でサポートしてくれた方々が、研究の意義を理解し、通常より安い料金で対応してくれたこと等によるものでもある。 尚、次年度使用額については、25年度請求額とあわせて使用する予定である。
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