研究課題/領域番号 |
23510334
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小田 尚也 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30436662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | パキスタン / 土地所有 / 農村の権力構造 |
研究概要 |
本研究はパキスタン農村における土地所有と権力の関係について分析を行うものである。2011年度は2002年及び2008年の下院議会選挙データの分析を行い、大きな変化が見られた選挙区・地域の洗い出しを行った。特にパンジャーブ州、シンド州に焦点を当てた。この2州で小選挙区下院議席数272席のうち、209席を占め、またパンジャーブ州南部からシンド州にかけては依然として大規模な土地所有形態が顕著な形で残っており、分析対象としてふさわしいからである。 2002年と2008年の下院議会選挙データからカラチやラホール等の5大都市圏を除く151(パンジャーブ110、シンド41)の小選挙区を分析した結果、2002年の議席を2008年の選挙においても維持できた政党(候補者が党の鞍替えして当選した場合を含む)は48.3%の73選挙区であり、高い流動性が確認された。このことから、分析対象の農村部においては独占的な力が存在し、一方的に権力を握っているということは考えにくいと言える。 しかし、州別で見た場合、大きな違いが生じる。パンジャーブ州110の選挙区中、政党の交代が見られた選挙区は67区と6割を超える高い比率であるが、シンド州では41選挙区中6区と15%にも満たない低い比率となっている。さらに詳述すると、パンジャーブ州では南部の大土地所有が残る選挙区を含む全州レベルで政党の交代が見られる一方、シンド州の大土地所有色の強い地域では政党の交代がほとんど見られず、大土地所有と権力の関係における両州の違いが現れている。 パンジャーブ州のデータからは、変容する農村社会において、「大土地所有者=農村の権力者」であるという構図の崩壊が見られるという本研究の仮説が支持されるが、シンド州の選挙データはこれを棄却するものである。この発見は今後の研究に非常に重要かつユニークな視点・問題点を投げかけるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2002年および2008年の下院議会選挙データの分析より、パンジャーブ州農村部において土地所有と権力の関係がこれまで想定されていたような単線的なものでない可能性が実証的に確認された。この点は初年度の成果として評価できるものである。 一方、下院議会選挙データの一部不備により、2011年度に予定した準備的現地調査が延期となり、その結果、現地調査で収集予定であったパンジャーブ州農村部選出の当選・落選議員のプロフィールのデータベース化に遅れが生じ、質的な側面からの分析が限定的となった。この遅れは2012年度の夏に現地調査を実施することでリカバー可能である。
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今後の研究の推進方策 |
2011年度の選挙データ分析から、議席の維持ができなかった小選挙区について、現地調査によるインタビュー調査、当選・落選議員のプロフィール調査などの詳細な分析を加え、小選挙区を以下の4つに分類する。(1)2002年、2008年の下院議会選挙当選者ともに大土地所有者である場合、(2)2002年の当選者は大土地所有者であるが、2008年はそうでない場合、(3)2002年、2008年の当選者ともに土地所有とは関係のない者である場合、(4)2002年の当選者は大土地所有者ではないが、2008年はそうである場合。 上記4分類の中で、土地所有と権力構造の関係が大きく変化したと思われる選挙区の絞り込みを行い、追加的な現地調査から、土地と権力の結びつきが時代とともにどのように変化しているか等の量的データからは把握できない質的な情報の入手を行う。また権力構造の変化と土地所有に関する計量的な分析(logitやprobit分析)に必要なデータの収集を行う。得られたデータをもとに権力構造変化の決定要因分析を行う。 以上の量的、質的な分析をもとに、農村経済・社会の変容が進行する中、在地権力と呼ばれる大土地所有者が権力者として存在できない環境が形成されつつあるという仮説の検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
下院議会選挙データの一部不備により、データ入力に遅れが生じ、準備的現地調査を実施するには十分な情報が得られず、調査を延期とした。その結果2011年度に未使用の研究費が生じた。 2012年度は2011年度実施予定であった準備的現地調査を2012年夏に実施する。その結果をもとに調査対象地区の詳細な絞り込みを行い、2012年秋に調査対象地区において、政治家、村人等へのインタビューを含む詳細な調査を実施する。よって2度の現地調査を予定しており、これにかかる経費を支出する。 その他、データ入力のアルバイト雇用、現地調査時のアシスタント雇用、参考文献購入等への支出を予定している。また9月にシンガポール国立大学南アジア研究所で開催されるワークショップでの発表を予定しており、これにかかる経費を支出予定である。
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