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2012 年度 実施状況報告書

パキスタン農村における土地所有と権力のダイナミクスに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23510334
研究機関立命館大学

研究代表者

小田 尚也  立命館大学, 政策科学部, 教授 (30436662)

キーワードパキスタン / パンジャーブ州
研究概要

2002年と2008年のパキスタン総選挙結果の比較から、下院議員選挙においてパンジャーブ州では110選挙区中67区(大都市圏除く)と6割を超える高い流動性があったことを指摘した。今年度はこの政党の交代が見られたパンジャーブ州の選挙区の分析を行った。67選挙区のうち、最も議席を失ったのがパキスタンムスリム連盟カーイデアーザム派(PML-Q)で39議席、政党が交代した選挙区全体の6割近くを占めた。2002年の総選挙ではPML-Qは56選挙区で議席を獲得しており、2008年選挙ではそのうちの7割の選挙区での議席を失ったこととなる。一方、最も議席を獲得したのがパキスタンムスリム連盟ナワーズ派(PML-N)の35議席、続いてパキスタン人民党(PPP)の21議席であった。3大政党の純議席増減で見た場合、PML-Qが37議席減、一方、PML-Nが34議席増、PPPが11議席増であった。
ムシャラフ大統領(2008年当時)を支持するPML-Qの議席減は事前に予想された。州レベルの分析ではPML支持者内でPML-QからPML-Nに票が流れ、PML-Qが失った議席をPML-Nが拾ったという見方ができる。しかし各選挙区における政党交代パターンの詳細はPML-Q→PML-N(19選挙区)、PML-Q→PPP(16選挙区)、PPP→PML-N(8選挙区)(上位3つ)であり、PML-Qの議席減(PML-Nの議席増)はマクロ的な数字から判断されるPML-Q→PML-Nという流れのみで説明できない。PML-Qの議席はPML-NとPPPによって占められ、またPML-Nの議席増はPML-Q→PML-N及びPPP→PML-Nによって説明される。興味深いのはPML-Q→PPP及びPPP→PML-Nがパンジャーブ州南部の大土地所有制が残り、かつPPPが有力であった地域で比較的多く発生していることである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究の遅れは農村調査実施時期の変更によるものである。当初2012年にザルダリ政権の任期満了に伴う総選挙が予定されていたが、2013年5月に選挙がずれ込み、それに伴い農村調査を2013年の総選挙後に実施することがより効率的であると判断したためである。これにより2002年、2008年の総選挙との比較が可能となり、最新のデータを使いながら農村での権力構造の変容を捉えることが可能となる。

今後の研究の推進方策

2013年5月の総選挙・下院議員選挙結果のデータ収集および整備を行うとともに、パンジャーブ州農村部において総選挙以降、農村調査を実施する。農村調査では2013年選挙の立候補者(当選、落選を含む)や農村に関する量的な調査に加え、農村の有力者や農村住民にインタビューを行い、土地と権力の結びつきが時代とともにどのような変化を見せているか等、量的データからは拾えない質的な情報の入手を行う。これまでの2002年、2008年の選挙データ分析および文献レビューに、2013年の調査データの分析を加えることでより深い洞察が得られるものと考えられる。秋以降は最終成果の執筆を行い、各種ジャーナルや学会での発表を通じて成果の発信を行う。

次年度の研究費の使用計画

次年度研究費は、パキスタンへの現地調査費用、海外学会・ワークショップへの出張旅費、国内旅費、農村調査関連の人件費、委託費、論文執筆に必要な経費等に支出する。この中でも大きなウエイトを占める現地調査は、総選挙後の6月、農村調査実施の8月、および予算の余裕があれば1月を目処にフォローアップ調査の実施予定である。おおよその研究費の配分は、次の通りである。現地調査費用(45%)、海外学会・ワークショップ参加(15%)、国内旅費(10%)、農村調査関連費用(20%)、その他(10%)

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 米パ関係がパキスタン経済に与える影響とパキスタン国民の反米感情2013

    • 著者名/発表者名
      小田尚也
    • 雑誌名

      現代インド研究

      巻: 3号 ページ: 115-129

    • 査読あり
  • [学会発表] An Analysis on the Relationship between Labor Migration and Landholding2012

    • 著者名/発表者名
      Hisaya Oda
    • 学会等名
      International workshop on Diaspora and Development: South Asian Diaspora Engagement in South Asia
    • 発表場所
      National University of Singapore, Singapore
    • 年月日
      20120927-20120928
  • [学会発表] The Impact of the US-Pakistan Relationship on the Pakistani Economy

    • 著者名/発表者名
      Hisaya Oda
    • 学会等名
      The seminar on Pakistani Studies organized by Department of Humanities and Social Science, Lahore University of Management Science
    • 発表場所
      LUMS, Lahore
  • [学会発表] カースト、土地、労働移動―ビハール州の事例から

    • 著者名/発表者名
      辻田祐子、小田尚也
    • 学会等名
      第25回日本南アジア学会
    • 発表場所
      東京外国語大学(東京都)
  • [図書] 「労働者送金と途上国経済:パキスタンの事例を中心に」黒坂・大野編『国際的過剰流動性と途上国経済への影響』2013

    • 著者名/発表者名
      小田尚也
    • 総ページ数
      211-236
    • 出版者
      日本評論社

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公開日: 2014-07-24  

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