本研究は、1990年代半ばに導入された住民参加型森林資源管理(コミュニティ・フォレストリー)に対するミャンマー農村社会の受容と対応を村落の組織力の観点から解明することを目的とする。最終年度はこれまでと異なる地域(ヤカイン州)でのコミュニティ・フォレストリーの実態調査を実施することを予定していたが、8月の洪水被害、仏教徒・イスラム教徒間の衝突による社会情勢等の影響から同地域での調査許可の取得が難しかったため、そうした制約のないヤンゴン地域及びバゴー地域への調査対象地の変更を余儀なくされた。特に、今回は共有資源(資金)の動員方法として農村金融にも着目しながらの調査を実施した。 生態環境も影響して共有林活動はほとんど見られなく、また山間部・ドライゾーンの村々と比較してその他の活動の頻度も少ない傾向が見てとれた。都市部に近いことや人口の流動性の高さ(ダイウーの農村ではタイ・マレーシアなどの海外出稼ぎが依然顕著であった)の影響が大きいと考えられる。 村レベルの共有資源動員のあり方として、農村部における小口金融や村ベース共有資金の推進の可能性という観点からみると、これらの地域では小口金融需要が非常に高いことが再確認されると同時に、バゴーなどでは(町に近いエリアを中心に)、マイクロファイナンス機関の競合も次第におきていた。いうなれば、ミャンマーにおける小口規模の信用供給は地域的偏りを生みつつあり、それに伴う弊害も今後顕在化してくる可能性が否定できない。
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