研究課題/領域番号 |
23510342
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
姫岡 とし子 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80206581)
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キーワード | ジェンダー / 近代ドイツ / ナショナリズム / 反女性参政権 / ネイション / 右派女性運動 / フェミニズム |
研究概要 |
本年度は、まず4月にメトロポリタン史学会で成果の一部を報告した。わが国ではまだ研究のない「近代ドイツのナショナリズムとジェンダー」に関して、1,外国の研究動向を整理し、2,ナショナリズムにとってジェンダーは不可欠の構成要素であること、3,ジェンダーに依拠してどのようなネイションの秩序が作られているか、4,ナショナリズムにはどうような潮流が存在し、それがどのような相互関連にあるか、5,具体例として反女性参政権運動をとりあげ、反対理由と反対勢力について考察し、6,反女性参政権を含めたナショナリズム陣営での活動は、女性の政治参加に反対していたにも関わらず、女性の政治化を推進し、結果的に女性参政権導入の基盤を作ったこと、を指摘した。この報告は論文として執筆し、平成25年度に刊行される予定である。 夏にはドイツに赴き、ベルリンの国家図書館および連邦文書館で資料を収集した。今回はナショナリズムとジェンダー関係の他に、植民地とジェンダーに関する資料を集めた。植民地関連では、ドイツの覇権と「民族的優秀さ」を誇示するために、現地でもドイツ人のドイツ性を守ることが重視され、女性は「血と文化」の擁護者として植民地運動のなかでしだいに発言権を獲得していった。ドイツ人の「血と文化」を守るために異人種婚が禁止されるが、その課程で女性がどのような働きをして、それが社会的にどのような影響を与えたのかを詳しく考察する予定である。これに関する論文も、25年度に執筆する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだ、このテーマでの論文を書くにはいたっていないが、現在準備中であり、本年中に「ナショナリズムと反女性参政権」に関する論文が刊行される予定である。また昨年は、関連テーマとして、「ホロコーストの記憶文化と性」、「歴史教育とジェンダー」、「2011年の日本歴史学会におけるヨーロッパ史に関する回顧と展望」に関する論文も執筆した。その課程で、さまざまな文献を読み、またドイツでも調査をしたり、研究交流を重ねたりすることによって、研究課題に対する理解を深化させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は3年目にあたり、まとめの年でもある。これまでに考察してきたことを論文にまとめる作業を行う。さらに、これまで収集してきた資料をを整理・検討して、夏には最後のドイツ出張を行い、また抜けている項目に関する資料を収集する。重点項目としては、女性の政治化の程度やその内容を知るために、女性団体がどのような活動をし、それに対して、男性および女性側からどのような反応があったのかを考察することで、これにより女性が第二帝政期が進むにつれて、社会においてどのような位置を占めるようになっていったのかが明らかになると考えられる。女性たちが政治活動には反対しながら、政治化していく様相を解明していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
最大の支出項目は旅費で、ドイツ出張、京都の立命館大学でのマイクロフィルムの読解やドイツ現代史研究会への出席にあてる。研究費全体の75%あまりを旅費にあて、その他に、文具購入、謝金、コピー費、書籍代に支出する。金額のかさむ物品については、今年度は購入しない予定。
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