研究課題/領域番号 |
23510344
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
申 キヨン お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (00514291)
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キーワード | 国際情報交換 / ナショナル・マシナリー / ジェンダー主流化政策 / 韓国 / 女性家族省 |
研究概要 |
本年度も引き続き夏にソウルでフィールドワークや関係者へのインタビューを実施し、韓国の政権交代期におけるジェンダー政策の変化について考察した。また、12月に行われた韓国の大統領選挙でジェンダー政策関連公約やナショナル・マシナリーの役割の変化を考察した。大統領選挙では女性候補者が当選する史上初の結果となったが、それ故にジェンダー問題は候補者の性別に集中され、ナショナル・マシナリーの役割自体の議論は少なかった。しかし、前政権と違い、福祉や性暴力の問題は最優先の政治課題に位置づけられ、女性家族賞の予算は増加し、大臣も大統領の側近の女性政治家が任命された。今後の展開についても考察する必要があると思われた。 フィールドワークと同時に、前年度に引き続き、文献収集および資料調査を継続的に行い、データの構築や理論検討を継続に行った。特に近年、多文化社会の現実を積極的に取り入れた政策の枠組みとして、交差性(intersectionality)を考慮したジェンダー・intersectionality主流化政策枠組みに注目した。これらの議論は、ジェンダーのみならず人種や宗教など複合的に構築されるアイデンティティや差別構造にいち早く取り組んだヨロッパーにおいて盛んに検討されている。しかし、グローバル化により多分化が進んでいる韓国においても示唆点が多いと考えられる。つまり、ナショナル・マシナリーはジェンダー関連政策に取り組もことが期待されるが、ジェンダー関連政策を国籍や階級の問題と切り離して形成・執行するのは不十分であるばかりか女性間の格差を広げる危険性まで持ちうることが理論的に指摘できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールドワークやインタビュー調査が概ね順調に進んだ。「女性家族省」を担当している記者や国会の「女性家族委員会」の議員二人にインタビューが実施でき、理論研究と総合補完的に研究が進んだからである。韓国の国会資料を検討する作業も順調に進んた。ただし、韓国の政治状況が国会および大統領選挙を迎えていたため、政府関係者には思ったほどインタビューができなかった。その代わりに、書面インタビューや韓国語論文の収集、及び女性団体のシンポジウム等に参加することで現在進行中の情報を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は本研究課題の最終年度であり、概ね成果報告と論文執筆に専念する予定である。第1に、昨年までの研究成果については今年の『国際ジェンダー学会誌』に投稿が決定しているため、まずは日本語の学術論文を完成させることに力点をおく。 第2に、韓国では昨年12月の大統領選挙で「女性大統領」が誕生した。そのような新しい政治環境がどのようにジェンダー主流化政策に影響し、その担当部署とも言える「女性家族省」の役割や権限(強化または弱体化)に影響を及ぼしているのかを考察して行く。ただし、すでに研究支援の最終年度に入るため、追加調査は一回のみ行い、今後の新たな研究課題に発展させるための基本調査の水準でとどめる。 第3に、日程調整ができれば、韓国の研究者または女性家族省の関係者を招聘し、研究会を実施する。 第4に、研究成果をひろく発信するために、国内及び海外学会の報告や英語圏の学術雑誌に投稿する準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上のような研究推進方策に合わせ、 1。旅費75万円:調査のための旅費(ソウルー東京一回)と参加が確定されたヨーロッパの専門家シンポジウムへの参加(ベニスー東京一回)、及び韓国からの専門家招聘に関わる旅費を使用する。 2。謝金・人件費10万円:研究執筆に関わる補助、研究会補助のための院生への謝金、招聘研究者への謝金として使用する。 3。物品費15万円:主に研究内容に関わる図書を購入する。
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