研究課題/領域番号 |
23510345
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
富山 智香子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80359702)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自己免疫性肝炎 / エストラジオール / 肝内樹状細胞 / PD-L1/PD-L2 / 自己抗体 |
研究概要 |
自己免疫性肝炎も他の自己免疫性疾患と同様に女性患者が多いこと、好発年齢が10代と50代といった性ホルモンが大きく変化する年代で発症しやすいことから、女性ホルモンが自己応答性を誘発しやすいとも言われているが、未だ解明には至っていない。そこで、抗原提示細胞の一つである樹状細胞と女性ホルモンの自己応答性の関連について、自己免疫性肝炎モデルを用いて女性ホルモンが肝臓内の樹状細胞の抗原提示能やT細胞の応答性にどのような影響を与えるかについて当該年度は以下の点において検討を行った。 第一に、エストロゲンが自己免疫性肝炎の肝障害の程度と自己抗体産生に与える影響について検討した。マウスに各濃度(5μg, 25μg, 250μg/mouse/day)のエストロゲンを皮下注した後、自己免疫性肝炎を誘導した。各マウスから経時的に血清を採取し、肝障害の程度と自己抗体価について検討した。その結果、エストロゲン濃度依存的に肝障害が抑制されたものの、最大投与量においては、胸腺委縮を認めた。自己抗体価(ss-DNA)については、肝障害が抑制された個体に対しては低下傾向にあったものの、エストロゲン投与量と抗体価については明確な傾向は不明であった。第二に、エストロゲン投与マウスの樹状の性状・動態解析(in vivo)について検討した。自己免疫性肝炎を抑制し、かつ胸腺の委縮しないエストロゲン量の25μgを正常マウスに投与し、肝及び脾樹状細胞の性状解析を行った。その結果、肝・脾共に免疫機構抑制に働くとされている形質細胞様樹状細胞が減少したものの、抑制機能分子であるPD-L1, PD-L2共に発現量の増大を認めた。 以上の結果から、エストロゲンは自己免疫性肝炎の肝障害を抑制し、その機構は肝、あるいは脾樹状細胞のPD-L1,PD-L2の発現量増大が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に行う予定であった各種マウス(老齢マウス、実験的低エストロゲンマウス)への自己免疫性肝炎を誘導した時の肝障害の程度や自己抗体の測定については、マウスの確保の都合上、次年度以降へ変更した。また、培養実験についても次年度以降へ変更した。以上の2点を変更する代わりとして、最終年度に行う予定であったエストロゲン存在下における自己免疫性肝炎マウスの樹状細胞の性状変化について追究し、一定の成果を得た。実績については上記の「研究実績の概要」の通りである。変更点はあったものの、当該研究の一連の計画内での変更であり、達成度については、概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、エストロゲンの自己免疫性肝炎の肝障害抑制と樹状細胞の機能抑制との関連性について追究・推進する。そのためには、エストロゲン存在下での自己免疫性肝炎マウスの樹状細胞をフローサイトメトリーで性状解析し、また、培養実験にて機能解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、フローサイトメトリーのデータ解析ソフトを購入し解析の効率化を図る。また、性状解析に必要な抗体などは既に今年度購入済みであるため、今後、樹状細胞の機能解析に必要な試薬(例:CFSE, CBA kitなど)を購入する計画である。
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