研究課題/領域番号 |
23510347
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20262941)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | マリー・キュリー / ジェンダー / 科学アカデミー / 国際研究者交流(フランス) / 国際情報交流(フランス) |
研究概要 |
昨年度は、マリー・キュリーの時代より100年さかのぼる18世紀の科学アカデミーと関係した女性研究者についての欧文、和文の論文を3本完成し、すべて審査を通過した。印刷は24年度となるが、すべて審査の段階から科学研究費補助金の助成を受けたことを記載し、その宣伝に努めた。 講演会などの啓蒙活動については、マリー・キュリーおよび18世紀、19世紀において科学アカデミーと関係した女性たちの生涯を簡単にまとめたものを、画像入りでホームページに記載して一般の人々にも近づきやすいようにした。そのほか、女性センターや市民大学講座などで、マリー・キュリー関連の講演を行い、この時代の学問の状況について啓蒙した。最大の啓蒙活動はテレビ出演で、番組のメインゲストとしてマリー・キュリーについて話をした。 マリー・キュリーが属していた多数のアカデミーについてのデータベースの作成は、思いの外時間がかかり、ただいま10分の1程度が終わった段階にとどまっている。これはすでに廃止された機関があるほか、アカデミーと一口に言っても、各団体で存在形態が異なり、広報活動が非常に多様であることに起因する。 国際的な研究活動としては、パリのキュリー博物館の研究員との活発な情報交換を行い、マリー・キュリーの科学アカデミー立候補に際しては、キリスト教の問題や人種問題、および当時欧米でもりあがりを見せていた女性参政権運動などのダイナミズムが、その結果に大きく関わっていたことが判明した。フランス側との国際的な研究協力については、このほかに、パリの化学史学会の会長との協力で、マリー・キュリーとアカデミーの関係についても、キュリーと日本人科学研究者の観点からから見た仏語論文を完成し、これも審査通過済みである。 当初予定していた外国人研究者の招へいについては、東日本大震災の影響で実現できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
18世紀から19世紀の科学アカデミーに関する調査は、18世紀に関してはだいたいできていると考える。ただし、マリー・キュリーが属していた多数のアカデミーの中で、現在存続していない組織や、発展途上国の組織については、なかなか調査がはかどらなかった。 マリー・キュリーとイレーヌ・キュリーのアカデミーの選挙立候補とその落選の経緯については、先の年度に行う予定であったが、今回キュリー博物館で直接研究員とそれについてディスカッションする機会が持て、むしろ早い段階で多くの貴重な情報を得ることができた。 ホームページ他の啓蒙活動については、これは喜ばしいことではないのだが、東日本大震災で生じた福島の原子力発電所の事故の影響で、世界中から原子力に大きな注目が集まり、そこから放射能の発見者であるマリー・キュリーが着目されることとなった。そのため、当初考えていた以上に、男女共同参画センターや市民大学講座、はてはテレビ局などからもマリー・キュリーのことについての講演や出演、原稿依頼が相次ぎ、非常に順調と言っていい。ただし、先にも述べたように、その理由のかなりの部分は原発事故なので、一概に喜ばしいとは言えないものがある。 外国人研究者の招へいについては、講演と対照的に福島問題の負の影響が出て、誰も来日を受諾してくれなかった。しかしこれは不可抗力だと考えている。しかし幸いに23年度のウチに、フランス化学史学会会長ダニエル・フォークの、25年度の招へい受諾をとりつけたので、一応の成果はあったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の応募申請書を書いたときには全く予測しなかったことだが、東日本大震災と、それにともなう福島原発事故の問題があった以上、本研究とこの問題との関係を切り離すことはできないと思っている。 本課題が科学アカデミーとの関係を中心に扱うとはいえ、放射能の発見者であるマリー・キュリーをとりあつかう以上、会員選挙だけではなく、放射能の問題に関しても、マリー・キュリーや科学アカデミーの学者たちの、放射能に対する態度というものも、今後の研究の射程に入れていきたいと考えている。 また、それとも関連するが、今回の日本における人災の部分はジェンダー問題とも切り離せない部分が多々存在すると申請者は考えている。したがって、マリー・キュリーとイレーヌ・キュリーを拒絶した科学アカデミーのジェンダー的態度を調べるだけでなく、日本に於いて原子力政策に関わる人々のジェンダー的態度との類似性についても追加考察事項に加えたいと考えている。 以上の視点を加味した上で、18世紀から20世紀初頭の科学アカデミーについての調査の続行と、マリー・キュリーの科学研究とアカデミーについての啓蒙活動をつづけていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年2月に24年度の予算の使用計画について書いたときには決定していなかったが、3月の段階で外国人研究者の招へいが25年度となったので、24年度には外国人研究者は招へいしない。したがって先にこの分に計上していた予算および平成23年度の繰越金を、24年度には主に当該研究に関連した論文の英語翻訳料と、啓蒙活動に携帯する、消耗品程度のコンピュータ他、発表機材の購入に充当したいと考えている。というのも、啓蒙のための講演と言っても、先方の準備状況が多様であり、こちらから、(貴重な情報の入っていない)簡易なコンピュータを持って行った方がよい場面が多々あったからである。 他の事柄に関しては、当初通り、データベース作成のための費用および調査のための国内旅費、書籍、ホームページ充実などの費用の計上を計画している。
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