研究課題/領域番号 |
23510349
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中川 幹子 大分大学, 医学部, 助教 (50244182)
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研究分担者 |
宮崎 寛子 大分大学, 医学部, 医員 (20555205)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 冷え症 / 血管内皮機能 / 心拍変動 / 自律神経機能 / 漢方薬 / 微小血管性狭心症 |
研究概要 |
【目的】若年健常女性を対象に、血管生理機能検査および自律神経機能検査を行い、冷え症の有無により比較した。また冷え症女性における漢方薬の効果を検討した。【方法】対象は冷えの自覚のある女性11名(冷え症群、平均年齢:23.4±4.2歳)および冷えの自覚のない女性10名(コントロール群、平均年齢:20.9±1.2歳)である。10分間の安静臥床後、赤外線体温計で皮膚温測定および血圧測定を行った。その後、Endo-PAT2000を用いて血管内皮機能検査を行い、Reactive Hyperemia Index (RHI)(反応性充血指数)およびAugmentation Index (AI)を計測した。またホルター心電図を装着し、24時間記録より心拍変動を解析した。冷え症群は1回目の検査日の2週間後から漢方薬(桂枝茯苓丸あるいは当帰芍薬散 7.5g/日)の内服を開始し、 2週間後に同様のプロトコールで2回目の検査を行った。コントール群も約1ヵ月後に2回目の検査を無投薬下で行った。全員1回目と2回目の検査日の性周期を一致させた。【結果】(1)冷え症群は皮膚温(足背と足指)はコントロール群に比し有意に低値であった。(2)冷え症群では血管内皮機能の指標であるRHIはコントロール群と有意な差を認めなかったが、血管弾性の指標であるAIは低下傾向にあった。(3)心拍変動解析において、冷え症群では副交感神経活動の指標がコントロール群に比し低下傾向にあった。(4)冷え症群は漢方薬投与後、有意な皮膚温の上昇を認めたが、RHI、AIおよび心拍変動指数は投与前後で有意な変化を認めなかった。【考察】健康若年女性の冷え症に、血管機能(特に弾性)の低下と自律神経機能異常が関与している可能性が示唆された。また、漢方薬は冷えを改善する効果があるが、血管内皮機能や自律神経機能に対する影響は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冷え症は更年期女性に多くみられるが、冷え症で悩んでいる若年女性も多い。冷え症は西洋医学的には自律神経機能失調による血管運動機能障害から生じる末梢循環不全が原因と考えられているが、血管内皮機能や自律神経機能との関係を臨床生理検査で客観的に評価している研究はほとんどなく、西洋医学的に有効な治療法はほとんどない。我々は初年度には、健常若年女性を対象とし、冷え症における血管内皮機能および自律神経機能の評価を行った。さらに漢方薬の冷えに対する効果と血管内皮機能および自律神経機能に及ぼす影響の検討を行い、血管機能(特に弾性)の低下と自律神経機能異常が冷え症の発症に関与している可能性があるという興味深い結果を得た。しかし、漢方薬は皮膚温を上昇させたが、血管内皮機能および自律神経機能には影響を与えておらず、他の機序により冷え症を改善させたと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後行う予定の研究は以下の2つである。(1)微小血管性狭心症の女性患者と健常更年期女性を対象に、ATP負荷冠血流速度測定試験および血管内皮機能測定、ホルター心電図を用いた心拍変動を測定する。(2)微小血管性狭心症患者および末梢性冷え症状有する患者を対象に、漢方治療を12週間行った後に基本プロトコールを用いた同様の評価を行う。漢方治療は、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、半夏厚朴湯のいずれかを12週間内服(7.5g/日)する。ただし、微小血管性狭心症と確定診断をつけることは容易ではなく、今年度の実施状況からも、予定通りの患者数が集まらない可能性がある。従って、まず健常更年期女性を対象にした研究を優先して進め、次年度及び最終年度の2年間かけて、微小血管性狭心症患者に対する研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
エンドパットのリース料および修理費、エンドパットプローブや薬品の購入、血液検査(外注)の検査料、被験者への謝礼に主として使用する予定である。また解析に使用するためのPC及びソフトが旧バージョンで処理能力の遅れや故障の危険性があるため、新規購入を予定している。調査研究および成果発表のための国内および外国旅費として使用予定である。
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