【目的】若年健常女性を対象に、血管生理機能検査および自律神経機能検査を行い、冷え症の有無により比較した。また冷え症女性における漢方薬の効果を検討した。 【方法】対象は冷えの自覚のある女性11名(冷え症群、平均年齢:23.4±4.2歳)および冷えの自覚のない女性10名(コントロール群、平均年齢:20.9±1.2歳)である。10分間の安静臥床後、赤外線体温計で皮膚温測定および血圧測定を行った。その後、Endo-PAT2000を用いて血管内皮機能検査を行い、Reactive Hyperemia Index (RHI)(反応性充血指数)およびAugmentation Index (AI)を計測した。またホルター心電図を装着し、24時間記録より心拍変動を解析した。冷え症群は1回目の検査日の2週間後から漢方薬(桂枝茯苓丸あるいは当帰芍薬散 7.5g/day)の内服を開始し、2週間後に同様のプロトコールで2回目の検査を行った。コントロール群も約1ヶ月後に2回目の検査を無投薬下で行った。両群とも1回目と2回目の検査日の性周期を一致させた。 【結果】(1)冷え症群は皮膚温(足背と足趾)はコントロール群に比し、有意に低値であった。(2)冷え症群では血管内皮機能の指標であるRHIはコントロール群と有意な差を認めなかったが、血管弾性の指標であるAIは低下傾向にあった。(3)心拍変動解析において、冷え症群では副交感神経活動の指標が、コントロール群に比し低下傾向にあった。(4)冷え症群では漢方薬投与後、有意な皮膚温の上昇を認めたが、RHI、AIおよび心拍変動指数は投与前後で有意な変化を認めなかった。 【考察】健康若年女性の冷え症に、血管機能(特に弾性)の低下と自律神経機能異常が関与している可能性が示唆された。また、漢方薬は冷え症を改善する効果があるが、血管内皮機能や自律神経機能に対する影響は認められなかった。
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