研究課題/領域番号 |
23510357
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
岡野 八代 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (70319482)
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研究分担者 |
牟田 和恵 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (80201804)
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キーワード | 社会学 / 政治学 / ケアの倫理 / グローバルな正義 |
研究概要 |
本研究の目的は、ケアラーの依存状態と暴力に晒されやすい社会状況を明らかにし、ケアラーに対する社会的・物的・人的支援の理論的根拠となるドゥーリアの概念を精緻化することである。本年度は、研究計画表に基づき、ケアの倫理とグローバル社会研究:文献研究を中心にした、ケアの倫理とグローバルな正義論を架橋する理論研究と、暴力に敏感で身体論を中心とする政治理論の確立をめざす研究を主に行った。その成果として、共同研究者である牟田和恵教授が編纂した、『競合するジャスティス――ローカリティ・伝統・ジェンダー』(牟田和恵編、大阪大学出版会、2012年4月)第13章「ケアの倫理とコンフリクトの政治」:313-338 頁を刊行した。 さらに、本研究のもう一つの目的である、男女平等を実現可能とする新しい社会保障の在り方の提言を一歩すすめるため、ドゥーリア概念を精緻化するとともに、伝統的な男性中心主義的(=自律的市民を理念とする)平等概念の根本的な見直しを試みた。その成果として共著『ジェンダーと法 第1巻 ジェンダー法学のインパクト』(三成美保・広渡清吾・阿部浩己・小島妙子編、日本加除出版株式会社、2012年11月)第7章「ケアの倫理と法――合衆国の同性婚論争における平等概念を中心に」:103-117頁を刊行した。 また本年度は、合衆国コーネル大学で客員教員として8月15日から9月20日までの約一月間の滞在において、「慰安婦」問題、そして日本における原発問題について、ケアの倫理から再度捉えかえす機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核となる理論研究、ケアの倫理と正義の倫理の架橋については、前年度に引き続き岡野・牟田ともに、理論書を公刊し、順調に研究は進んでいる。 ただ研究計画では、合衆国とカナダにおけるオルタナティブな家族、ケア関係を中心としたコミュニティ形成について調査する予定であったが、その調査を着手することができなかった。予定を変更して、イタリア・ローマにある「女性の家」を調査し、ヨーロッパにおける女性運動、とりわけバチカン(カソリック教会)の抑圧のなかから抵抗する女性たちの運動について多くを学んだ。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究の最終年度にあたる。牟田は、日本家族社会学会にて、『家族を超える社会学』(新曜社、2009年)の続編にあたる、新しい社会の基盤をめざすシンポジウムを開催し、本研究を締めくくるべく、社会的提言へと結びつける。岡野は、ケアの倫理がもつ、新しい共同性にむかう実践的意義を、日本における「原発を問う民衆法廷」の実践をケース・スタディとしながら、フランスにおける国際社会学会で報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、海外での学会報告(フランス)ほか、本研究報告、発信のために主に研究費は使用される予定である。
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