研究課題/領域番号 |
23510358
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
関 明穂 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20314685)
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研究分担者 |
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
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キーワード | 性同一性障害 / セクシュアルマイノリティ / 当事者支援 |
研究概要 |
学校、職場、医療の場において性同一性障害の当事者が直面している問題とそれへの対応に関する調査を、性同一性障害の当事者と各施設の両者を対象として実施した。 性同一性障害の当事者からは、昨年度に引き続いて、各場面で直面している問題についての聞き取り調査を行い、困難を感じることが多い状況と、それに対して学校、職場、医療の側からどのような対応を受けているかをリストアップすることができた。 一方、各施設を対象とした調査としては、まず、全国の大学の保健室、学生相談室を対象として質問紙調査を実施し、性別違和を理由とした学生からの相談の有無とその件数、および、性別違和を訴える学生への対応について調査を行った。相談を受けたことのある大学は、回答のあった大学のうち約半数であったが、数年に1例程度の相談しかない大学が多かった。また、対応については、一定の基準を定めている大学は少数であり、事例ごとに本人と相談して個別に決めていくとの回答が多かった。相談事例が少ないために、どのように対応していくかについての事例の蓄積ができておらず、対応のあり方についての情報が求められていることが明らかとなった。 また、企業、地方公共団体の産業保健部門、人事部門を対象として、社員、従業員からの相談についてと、それへの対応について、大学を対象とした調査と同様の手法で調査を行った。企業等対象の調査結果については、現在集計中である。 さらに、性同一性障害の当事者に対する人間ドックでの対応のあり方について検討を行った。更衣室、トイレの使用、呼名のあり方、検査の基準値をどちらの性別のものを用いるかなどが問題であり、本人の希望とともに他の人間ドック受診者への配慮もしつつ、対応することが必要であるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学校、職場、医療の場において性同一性障害の当事者が直面している問題とそれへの対応について、性同一性障害の当事者自身と各施設の担当者との両面からの調査をこれまでに行うことができた。一部調査に関しては現在集計中であるが、性同一性障害の当事者が困難に感じる場面と、それに対してどのような対応が望まれるのか、逆に望まれないかを、当事者の視点から明らかにすることができたとともに、各施設の担当者がどのように対応しているかについても確認することができた。これらの成果を元に、本研究の最終的な目的のひとつである、望まれる対応のあり方マニュアルの作成に現在取り組んでいるところであり、おおむね順調に研究が進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに実施してきた、性同一性障害の当事者および当事者団体を対象とした調査と学校、職場、医療施設対象の調査の成果を元に、性同一性障害の当事者が困難を感じる場面と、それに対してどのような対応が望まれるのか、望まれないかをまとめた、対応マニュアルの作成を行う。なお、マニュアルの作成の際には、当事者団体と連携をとり、より当事者の実情や考えを取り入れたものとなるようにする予定である。 また、作成したマニュアルは本年度に行った質問紙調査を依頼した大学、企業等に送付するとともに、インターネット上でも公開し、広く活用できるようにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
性同一性障害の当事者への対応マニュアル作成にあたって、当事者自身からの意見を取り入れるために、当事者を含めてのマニュアル作成会議を持つ予定であり、会議室使用料、研究協力者謝金を予定している。 作成したマニュアルについては、印刷費とマニュアルを関係施設へ送付するため、その郵送費を要する。 また、次年度は本研究課題の最終年度であるため、GID学会などでの成果発表を予定しており、そのための旅費を要する。 なお、質問紙調査票の発送数が本年度当初に見積もっていたものより少なかったため、次年度への繰越金が生じた。この次年度使用額については、次年度に作成予定のマニュアルの配布先を、高等専門学校、短期大学へ拡大するために使用する予定である。
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