学校、職場などの場において性同一性障害の当事者が直面している問題とそれへの対応に関する調査を、性同一性障害の当事者と各施設の健康管理担当者の両者を対象として実施した。また、自助グループの活動状況についての調査も行った。 性同一性障害の当事者からは、半構造化面接法によりそれぞれの場面で直面している問題と困難を感じることが多い状況、各施設側からの対応状況およびそれに対する評価などについて聞き取りを行った。一方、大学、企業、地方公共団体に対して質問紙調査を行い、各施設での性同一性障害当事者からの相談件数と、当事者が困難を感じている状況に対しての対応のしかたについて調査した。 回答のあった中では、大学では約半数、職場では約2割で性別違和についての相談を受けたことがあったとの結果であった。しかし、相談を受けたことのある施設でも、事例数はわずかであったため、事例対応の蓄積は十分にはできておらず、相談があって初めて対応のあり方について模索することになる施設が多く、どのような対応を行えばよいかの情報が求められているものと推測された。 そこで、以上の結果をもとに、性同一性障害に関する基本的な情報と、大学や職場で当事者から相談があった場合にどのような対応を取ればよいか、また、取りうるのかについてをまとめた小冊子の作成を、性同一性障害の当事者から意見を聞きつつ行った。なお、この冊子については、質問紙調査を行った大学、企業、地方公共団体へ送付するとともに、必要とする人が容易に参照できるようにするために、インターネット上に開設したウエブサイト上(http://gender.web.fc2.com/)に公開した。
|