研究課題/領域番号 |
23520004
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
木村 純二 弘前大学, 人文学部, 教授 (00345240)
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キーワード | 日本倫理思想史 / 和辻哲郎 / 日本文化史 / 倫理学 / 思想史 |
研究概要 |
研究2年度となる平成24年度では、前年の研究会において、研究代表者および連携研究者・研究協力者の間で一つの議論の焦点となった和辻哲郎『古寺巡礼』の記述を検証するために、和辻が訪れた寺院を、利用したルートも含めて調査することが大きな課題となっていた。その調査旅行を3月に実施し、和辻が浄瑠璃寺を訪れる際、通過したと思われる旧街道も一部発見することができた。浄瑠璃寺への道中で、周囲の景色を眺めながら随想にふける初版『古寺巡礼』の記述、およびその後の改訂での書き替えは、和辻の構想力の特質を検討する上で大きな意義を担っているとの見通しを持っており、今回の調査でそれを確認することができたのは、大きな成果であったと考えている。その他、調査旅行を通じて、和辻の『古寺巡礼』の独自性や偏向性も確認することができた。これらの調査結果の成果は、今後、論文等の形で公表してゆく予定である。 また、研究代表者および連携研究者3名、研究協力者2名の研究成果の一部として、『季刊日本思想史No.80』(ぺりかん社)に『源氏物語』に関する論文を寄稿した。それぞれが和辻哲郎の日本倫理思想史および日本文化史研究を踏まえつつ、それを乗り超えるべく執筆したものである。伝統ある同誌においても、これまでに『源氏物語』の特集号は組まれておらず、学界にあらたな局面を切り拓くものとして意義を持つものと言える。 なお研究代表者自身の研究としては、昨年度東北哲学会で発表した「和辻哲郎における「恋愛」概念の葛藤について」を論文にまとめ、『東北哲学会年報No.28』に寄稿した。そのほかに、文学活動にいそしんでいた若き日の和辻に焦点を当て、これまでの和辻研究において利用されていない資料を独自に収集している。これについては、いずれ論文等の形でその成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、研究最終年度である平成25年度に論文や学会発表などのかたちで成果を発表する予定であったが、研究2年度となる平成24年度までに、研究代表者自身の成果として、すでに「和辻哲郎における「恋愛」概念の葛藤について」(平成23年10月、東北哲学会)、「和辻哲郎の日本意識―国民道徳論との関連から―」(平成24年3月、法政大学国際日本学研究所によるシンポジウム「日本を意識するとき」)の2本の学会発表、および論文「和辻哲郎における「恋愛」概念の葛藤について」(平成24年5月、『東北哲学会年報No.28』)1本を発表することができた。また、連携研究者である吉田真樹(静岡県立大学)も、すでに「近世庶民仏教思想と和辻思想史図式の捉え直し」(『思想史研究』14号、日本思想史・思想論研究会、平成23年9月)、「倫理学・日本倫理思想史の観点からみた「日本意識」」(『国際日本学』第9号、法政大学国際日本学研究所、平成24年3月)と和辻哲郎に関する論文を2本発表している。これらを総合して、「当初の計画以上に進展している」と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究最終年度となるため、研究代表者・連携研究者・研究協力者おのおのの研究成果を相互に報告・検討し合い、その成果を論文・学会発表等のかたちで取りまとめて公表してゆく方針である。成果の発表は、学会発表や学会誌を基本とするが、商業誌や書籍等のかたちも視野に入れている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題では、研究代表者・連携研究者・研究協力者による研究報告会を各年度2回開催する予定でいるが、平成24年度は相互のスケジュールが噛み合わず、結果的に一回しか開催することができなかったため、その分の旅費を次年度に繰り越す形になってしまった。平成25年度は研究最終年度となるため、研究成果の取りまとめのため、早めにスケジュール調整をし、進めて行きたい。研究代表者が収集した資料をすべて複写して、連携研究者・研究協力者に配布するのは困難であるため、平成25年度の夏の研究報告会は、研究代表者の勤務する弘前大学で開催する予定である。冬の研究報告会や、出版社との打ち合わせ等も含めて、旅費を80万円配分する。 また、和辻哲郎の初版本・初出論文等の資料の複写や製本の費用として30万円、関連図書の購入費として40万円を配分する。
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