本研究では、主として、〈生態心理学〉〈現象学〉〈認知哲学〉における3つの知覚論を比較検討することにより、その異同を分析することを行なった。そうした作業から明らかになったのは、(1)3つの立場ともに、知覚を受動的な感覚の統合ではなく、能動的な行為の連関として理解していること、(2)それにもかかわらず、3つの立場は認識論的に異なる前提を採用していること、である。これらの点を踏まえつつ、本研究は独自の立場から、知覚を「知覚行為(perception act)」として捉え直し、新たに知覚行為論を構築することを試みた。
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