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2013 年度 実施状況報告書

道徳の形而上学的基層の批判的検討─ミニマルな道徳形而上学の再構築のために

研究課題

研究課題/領域番号 23520006
研究機関岩手大学

研究代表者

宇佐美 公生  岩手大学, 教育学部, 教授 (30183750)

キーワード道徳の基礎付け / 道徳形而上学 / 動機づけ / 自由意志 / 尊厳 / 目的自体 / 自然主義 / 進化論的説明
研究概要

これまで本研究で行ってきた道徳心理学及び脳神経科学に関する研究成果の検討に加えて、本年度は、道徳に関わる形而上学的概念の生成と機能についての自然主義者による多様な説明の試みをいくつかのパターンで整理しまとめた。その中でも生物の生存に関わる「目的論的意味論」が最も基礎的で比較的射程の広い説明方法と考えられるが、それでもそれだけで、流通しているように見える形而上学的諸概念の機能と生成の道筋を包括的に説明することは難しく、言語獲得段階以降に新たに接合される性格の異なるシナリオが複数考えられ、その中には「自由」「目的自体」などいくつかの形而上学的な概念を包含する既存の倫理学理論とも整合的なシナリオも含まれる可能性が残っていることが確認された。
更に本年度は、道徳の基礎を考える上で重要と思われる「動機づけ」の問題についても検討し、欲求に直接依存しない理性に基づく行為への動機付けがいかなる根拠から正当化されるのかをめぐって様々な立場の論点を整理し、そこには共通して拘束力の根拠となる何らかの「規範的コミットメント」が働いていることを明らかにした。そしてそのようにして確保された理性的理由づけ内容にどのような「価値」ないし「目的」を設定するかにより、上述の形而上学的概念の生成のシナリオに接合することもできるが、その意味が単に幻想的な性質のものなのか、あるいは何らかの積極的意義を含んでいるのか、という課題の検討については次年度に送らざるを得なかった。
これらの研究の過程で研究代表者は、ドイツ・デュッセルドルフ大での「尊厳」概念をめぐる日独共同ワークショップや国内の学会で、本研究で検討している課題に関して研究者と意見交換を行い、最終的には専門の研究者によるエキスパートレビューを受けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

自然主義者による道徳の形而上学的概念の生成の仕方についての代表的な説明を批判的に検討し、形而上学的概念の意義づけを再評価するための道筋と道具立てはある程度確保できたが、自然主義者による多様な説明をより網羅的に検討するまでには至っていないため。

今後の研究の推進方策

26年度は本研究の最終年度にあたるため、本研究の中心的な課題であるミニマルな道徳形而上学の再構築を試みることともに、その成果を公表するための活動が中心となる予定である。具体的には、カントが自らの道徳形而上学において導き出した「普遍化可能性」や「目的自体」「自律性」「尊厳」といった概念が、今日の自然主義と脳神経科学や進化論などの諸科学の視点から見て消去ないし訂正が必要なものかどうかを検討した上で、改めて最小限の形而上学的概念の確定に基づく道徳の可能性を考える。そのために25年度に行った、道徳における形而上学的概念の生成の機序と根拠に関する検討をすすめ、自然主義者の研究成果を取り入れながら説明方法をさらに練り上げることで、道徳における多様な形而上学的概念の有効性と過剰さ・危険性を評価するための一つの批判的視点を確保することを目指したい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 理性に動機づけの力はあるか─道具的実践理性と純粋実践理性─2014

    • 著者名/発表者名
      宇佐美公生
    • 雑誌名

      岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要

      巻: 13 ページ: 11-25

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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