研究課題/領域番号 |
23520012
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20178156)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 教育史 / 自由学芸 / キリスト教 / 哲学・倫理教育 / イエズス会 / トマス・アクィナス / 人文主義 / 修道会 |
研究概要 |
本研究は、(1)キリスト教的人文主義教育に関する思想史的研究と、(2)イエズス会を中心とする修道会によるキリスト教的人文主義教育の実際上の展開に関する研究との両面からなる。(1)に関しては、さらにイエズス会の活動についての研究とより以前からの思想史研究とに分けられる。前者(イエズス会教育)に関しては22年度までにいくつかの論文でまとめてきた。23年度はこれらを踏まえて日本のキリシタン時代におけるイエズス会の思想史的特徴について編著書においてまとめた。また後者については私が最も主要的な研究対象としてきたトマス・アクィナスにおける学問論に関する研究に着手し、基本テキストである『ボエティウス「三位一体論」註解』に関する数編の論文をまとめた。(2)に関しては、8月にフランス、スペイン、イタリアに見学旅行に赴き、特にスペインにおいてイエズス会の創立者イグナティウス・ロヨラおよびフランシスコ・ザビエル関連史跡、カルメル会関連史跡、およびイエズス会の影響下にある聖心侍女修道会創立者ラファエラ・マリア関連史跡を見学し、また聖心侍女修道会が運営する学校数校を訪問・見学して、その伝統および現代直面する課題などについて修道会の現地教員にインタビューを行った。また帰国後、9月には日本における代表的なイエズス会学校である栄光学園を訪問し、特に同校の倫理科教員団と面談し、同校の教育の現状および直面する問題などについてインタビューを行った。いずれも、修道会のメンバーが減少する中でキリスト教的人文主義教育の理念を現代に活かすための努力と課題とについて多くの知見を得ることができた。以上(1)(2)の成果を踏まえつつ、日本倫理学会、日本哲学会などにおいて、教育問題に関わる「ワークショップ」の企画などを押し進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」(2)に記した見学旅行は、奇しくも本研究の趣旨に合致した清泉女子大学キリスト教文化研究所の企画によるものであり、訪問先に対する連絡・許諾等に関する手数なく初年度での見学が可能となった。(1)に記した文献研究による思想史的研究は概ね予定通り進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)のキリスト教的人文主義教育に関する思想史的研究に関しては、これまでアウグスティヌス、トマス・アクィナスおよびイエズス会教育について、いわばいくつかの「点」を定めて研究してきたが、今後は視座をより包括的な「線」となるように通史的展望を開くことを目指す。(2)のイエズス会を中心とする修道会によるキリスト教的人文主義教育の実際上の展開に関する研究に関しては、本年度のヨーロッパにおいて知見を得たので、今後はアジア・オセアニア地域に視点を広げることを目指す。以上の研究成果の「現代的意義」に関しては、各学会を通しての活動に反映させる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度に引き続き、(1)文献・資料の収集および学会等での発信、(2)学校の訪問調査を中心に使用する予定である。特に、資料収集および訪問調査のための旅費の支出が多くなることが予想される。
|