研究課題/領域番号 |
23520012
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20178156)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
キーワード | キリスト教 / 自由学芸 / 哲学・倫理教育 / イエズス会 / トマス・アクィナス / 人文主義 / 修道会 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)キリスト教的人文主義教育に関する思想史的研究と、(2)イエズス会を中心とする修道会によるキリスト教的人文主義教育の実際上の展開に関する研究、(3)さらには(1)(2)を踏まえその現代的意義を学会等を通しての社会活動へに還元することからなる。 (1)に関しては、25年度までにイエズス会の前史をなす中世後期における神秘主義の流れについての研究をいくつかの論文にまとめてきたが、26年度は改めてキリスト教の成立からスコラ学にいたる中世思想史の伝統全体を見通する研究に着手し、特にキリスト教成立の基盤をなす『イザヤ書』および『詩編』に関する論文をまとめ、これをもとに上智大学中世思想研究所において「聖書的伝統における苦難の意味」と題する講演を行った。さらに3月には筑波大学内で開催された国際シンポジウムにおいて16・17世紀におけるイエズス会と日本仏教との出会いについて英語で発表を行い、その内容を論文にまとめた。 (2)に関しては、東ティモールにおけるイエズス会学校の視察を計画したが、残念ながら事情により実行することができなかった。 (3)社会活動への還元として、日本学術会議哲学委員会「哲学・倫理・宗教教育分科会」の特任連携会員として、高等学校公民科「倫理」の振興に関する提言案の作成にあたった。また「可能性としての中世」を統一テーマとする日本倫理学会共通課題において「中世の知的世界を支える社会的現実」と題して教育社会史的内容の提題を行った。さらには東京都高等学校公民科 「倫理」「現代社会」研究会において「高校公民科「倫理」活性化への道~学術会議からの提言を巡って」と題して講演を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本務の管理職業務などの負担は相変わらず大きいが、概ね計画通りの成果を収めている。 (1)の思想史的研究については、上智大学での数回の講演、日本倫理学会共通課題での提題も含め、概ね順調に達成したと言える。 (2)のイエズス会を中心とする修道会によるキリスト教的人文主義教育の実際上の展開に関する研究に基づく視察旅行は残念ながら実施できなかったが、来年度以降実施する予定である。 本年度は、特に上記(3)の日本学術会議哲学委員会「哲学・倫理・宗教教育分科会」の特任連携会員としての高等学校公民科「倫理」の振興に関する提言案の作成を中心とする社会活動への還元に多くの精力を費やした。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度に中止となった訪問調査を続行、もしくは新たなキリスト教教育関係の施設を訪問調査し、これまでの研究と併せて成果を取り纏める。本研究の成果は27年度に新たに採択された基盤研究(B)「カトリック系人文主義教育と日本―イエズス会を中心に―」へと発展的に継承してゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度にイスラエルに調査出張を計画していたが、同国の安全事情の悪化にともない、中止せざるを得なくなったため、未使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
イスラエルの安全状況の改善次第で調査出張を行う。もしそれが不可能である場合には調査地を変更する、もしくは文献研究に切り替えて研究を行う。未使用額は出張旅費もしくは文献資料の購入に充てることとしたい。
|