本研究は、(1)キリスト教的人文主義教育に関する思想史的研究と、(2)イエズス会を中心とする修道会によるキリスト教的人文主義教育の実際上の展開に関する研究、(3)さらには(1)(2)を踏まえその現代的意義を学会等を通しての仕会活動へに還元することからなる。(2)で予定していた海外視察旅行を中止せざるをえなかったため、補助事業期間を延長する形となった。 (1)に関しては、日本カトリック神学会において、イエズス会霊性の基本をなす『霊操』成立史に関する発表を行い、同学会誌への掲載が決定している。また、10月には哲学会において、17世紀の日本におけるイエズス会コレジヨ教授ペドロ・ゴメスのアリストテレス解釈をアリストテレスからトマス・アクィナスを経ての霊魂論の思想史的展開の中に位置づける研究を発表し、これについても論文として公刊した。 (2)に関しては、9月には昨年度計画して話せなかった東ティモールの聖イグナチオ学院を訪問・調査を実施した。また、3月にはコンゴ民主共和国を訪問し、コンゴ・カトリック大学にて16・17世紀におけるイエズス会人文主義教育の展開、当時のイエズス会東洋布教の責任者であったA・ヴァリニャーノの事跡、特に「キリシタン時代」の日本におけるセミナリヨ、コレジヨの展開を中心に講演した。このコンゴ訪問はコンゴとの学術交流に向けての準備作業ともなっている。さらには、キンシャサのイエズス会教育施設として聖カニシウス哲学院および高等学校を訪問・調査した。 さらに(3)としては、日本倫理学会の共通課題を倫理学教育をテーマに企画し、人文主義的教育の現代的な意義について検討する機会も持った。
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