研究課題/領域番号 |
23520017
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 教授 (70212066)
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研究分担者 |
小川 眞里子 三重大学, 人文学部, 特任教授(教育) (00185513)
片倉 望 三重大学, 人文学部, 教授 (70194769)
秋元 ひろと 三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)
久間 泰賢 三重大学, 人文学部, 准教授 (60324498)
田中 綾乃 三重大学, 人文学部, 准教授 (70528760)
藤田 伸也 三重大学, 人文学部, 教授 (20283509)
森脇 由美子 三重大学, 人文学部, 教授 (10314105)
斉藤 明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80170489)
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (20178156)
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キーワード | おのずから / 原因 / 因果 |
研究概要 |
平成24年度も、前年度に引き続き研究分担者がそれぞれの専門領域から固有の「因果」「原因」概念の発表を行い、それらとの比較検討を通じて「おのずから」概念の立体的理解に努めた。 具体的には、西洋思想の文脈では、ソクラテス(プラトン)のイデア原因論、マルブランシュの機会原因論、(マルブランシュの合理主義を退けて経験主義の立場から因果関係を分析した)ヒュームの因果理解、さらに合理主義と経験主義を統合し独自の考察を展開したカントの因果論、また科学史からは18世紀ヨーロッパにおける病因論の展開、歴史学からは19世紀アメリカに事例を求めた因果理解の様態が示された。一方東洋思想の文脈からは、仏教における行為論を通じた因果理解、中国古代の儒家(孔子、孟子、荀子)に見られる因果理解、及び近世日本儒家思想の「天命」観に見られる因果理解が示されたほか、近世初頭のキリスト教日本伝道にあたって「おのずから」的思惟をその中核に据えた天台本覚論が、キリスト教的伝統とどのように交差し、軋轢をもたらしたかが明らかにされた。これらの発表は、論文集『因果の探究』(秋元ひろと編、三重大学出版会)として発表された。 これらの考察を通じて特に問題となったのは、人間の意志やその根底にある自由の問題と、「おのずから」的思惟との関係であった。「おのずから」は、単なる機械論的な因果理解と異質であるとともに、超越的な「天」や「自然」の様態と深く関わりをもつが、それが人の現実的な意志的行為やそれを可能とする「自由」と、どのように寄り添い、もしくは齟齬するかが今後の検討課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本の哲学的思惟の基層をなす「おのずから」概念の特質を、東西諸思想における「原因」「因果」概念との比較を通して明らかにしようとするものである。上記「研究実績の概要」でも示した通り、24年度も、分担者及び代表者から、それぞれの専門領域固有の「原因」「因果」理解が示されたことで、最終目的である「おのずから」概念の立体的理解にあたっての様々な観点を獲得することができた。特に人の行為における「意志」や「自由」の問題が比較にあたり枢要な観点となることが理解された点で、重要な観点を得ることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたり、23年度・24年度において獲得された知見をもとに、東西諸思想における「原因」「因果」の特質把握を総合し、「おのずから」概念の立体的な把握を行う。研究代表者及び研究分担者は、これまでに共有された知見を自らの専門領域にフィードバックさせ、他との連関を踏まえながら「原因」「因果」概念の特質をまとめ、研究代表者は、さらにそれらを踏まえて、「おのずから」概念の総合的な把握を行う。検討を行うために、24年度に引き続き定例研究会を開催するとともに、夏期には研究メンバー全員による研究会を開催して、成果の取り纏めに向けた準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」は少額(8,473円)であり、当初研究費使用計画に変更は無い。 具体的には、「設備備品費」で必要な文献資料を購入するとともに、「消耗品費」で研究環境の整備を行い、「その他」で関連文献の複写を行う。また三重大学において研究会を行うため、「国内旅費」を使用する。
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