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2011 年度 実施状況報告書

ウィトゲンシュタイン哲学に基づく意味のデフレーショナリー理論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520020
研究機関大阪大学

研究代表者

重田 謙  大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (30452402)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード意味のデフレーショナリー理論 / ウィトゲンシュタイン / クリプキ / 認識論的な懐疑 / 形而上学的な懐疑 / 規則のパラドックス / 意味論的パラドックス
研究概要

(1)本研究の申請後(平成23年2月)自分のある草稿についてのP.ホーウィッチ(NYU)との議論を通じて、研究内容と計画に一定の見直しを迫る事実が明らかになった。研究の核心である「ウィトゲンシュタイン哲学に基づく意味のデフレーショナリー理論」(以下DM)について、(その妥当性についての確信に変化はないが)特に米国において私が予想していた以上に抵抗と反発が強力であることである。申請の段階では、初年度において、DMの意味論としての包括的な適用可能性を示すことによって、なかば間接的にDMの妥当性を正当化する研究に取り組む予定であった。しかし、それより一段階前の準備作業としてDMの妥当性をできるだけ丁寧に示していくことが必要であることが明らかになった。したがって初年度はその段階の研究に時間を割いた。(2)研究発表「意味についての懐疑と解決」を通じて、クリプキの懐疑論的パラドックスに対する対応の仕方から意味論の立場を明確に分類できること、そしてその分類におけるDMの位置づけを明らかにできた。またDMと意味論的な懐疑との関係を考察するにあたって「形而上学的な懐疑」と「認識論的な懐疑」を峻別し、DMは前者を否定するが、後者の条件下にあることを明らかにできた。(3)投稿のため現在準備中の論文‘On Semantic Skepticism’において、ウィトゲンシュタインの規則をめぐるパラドックスとクリプキの意味論的なパラドックスを峻別する必要があること、またそれによってウィトゲンシュタイン解釈の側面からDMを正当化できることが明らかになった。(4)サーヴェイ:S.ソームズ、S.シッファー、P. グライス、D. デイヴィドソンの意味論とDMとの関係の解明を一定程度(まだ完全ではない)進めることができた。(5)研究発表「「因果と自由」によって、DMと行為論との関係およびDMに基づく自由の擁護の可能性を解明できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1)本研究の申請後に、研究のスタート地点を一段階手前にする必要が明らかになった。本研究の申請後(平成23年2月)自分のある草稿についてのP.ホーウィッチ(NYU)との議論を通じて、研究内容と計画に一定の見直しを迫る事実が明らかになった。それは、研究の核心であるDMについて、特に米国において私が予想していた以上に抵抗が強力であることである。申請の段階では、初年度において、DMの意味論としての包括的な適用可能性を示すことによって、間接的にDMの妥当性を正当化する研究に取り組む予定であった。しかし、この現状把握をふまえるとそれより一段階前の準備作業として、DMの妥当性を直接示していくことが必要であることが明らかになった。(2)研究発表「因果と自由」は「バイオサイエンスの時代における人間の未来」という研究との関連においてなされた(2か月ほどこの発表の準備にあてられた)。それは、DMと因果関係および行為(あるいは自由)との関係においてDMの適用可能性を探るものであり本研究と間接的に関連している。ただし本研究の目的からすればやや先の段階の研究にあたり、それによって中心課題であるより基礎的な段階の研究の進捗がやや遅れることになった。(3)申請時想定されていなかった教育方面の仕事の依頼がありエフォート率が10%ほど下がった。

今後の研究の推進方策

(1)研究実績の項目に示した通り、本研究の目的を十全に達成するために研究段階を一段階手前に遡ることにした。長期的に見るならば、DMの妥当性を直接正当化する作業にもう少し時間を割くことによって研究の成果をより質の高いものにできると判断したからである。この段階の研究(「DMの妥当性の直接的な正当化」)には二つの方向からつまり、a. DMのウィトゲンシュタイン解釈としての妥当性の検討、b.DMの、ウィトゲンシュタイン解釈とは独立した意味についての理論としての妥当性の検討、がおこなわれる必要がある。23年度はその作業を遂行したが、24年度ももう少し継続する必要がある。(2)[研究目的1](DMによる意味の諸理論の分類と再編成)については(1)と並行して23年度にも一定程度進めることができたが、24年度は(1)についてメドをつけて[研究目的1]により傾注する予定である。(3)[研究目的2](形而上学的観点からするDMの理論としての限界の検討)は、(1)(2)と本質的に関連しているので(1)(2)の研究に織り交ぜておこなっていく。ただし、この観点からする独立した研究成果を、たとえば論文として形にしていこうとすると、(1)(2)の実質的な進捗が損なわれる可能性があるので、基本的には(1)(2)の進行を可能な限り優先していくことにする。もちろん、(1)(2)と並行して(3)を進める必要がある場合にはその研究も積極的に推進していく。

次年度の研究費の使用計画

(1)申請段階では24年度は北米ウィトゲンシュタイン協会での発表に応募する予定であったが、昨年度の研究との関係で第35回国際ウィトゲンシュタインシンポジウム(ウィーン)に応募することに変更する。したがってそれに対応して旅費等を使用する予定である。(2)世界哲学会は25年度開催の予定であるが、その発表の応募締め切りは今年度中であると思われるので原稿および校閲等の準備に研究費を使用する予定である。(3)25年度は研究の最終年度にあたるので、当初の予定通り研究成果報告書の作成および郵送等に費用を確保しておく。(4)研究用の書籍については、研究内容の改変にともなって多少の変更の必要が生じると思われる。たとえば[研究目的2]のために必要な書籍についてはやや出費を抑え、その分を準備段階の作業と[研究目的1]に必要な書籍に充当していく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 「因果と自由――『哲学探究』における意味論の観点から」2011

    • 著者名/発表者名
      重田謙
    • 学会等名
      バイオサイエンスの時代における人間の未来 第20回セミナー(招待講演)
    • 発表場所
      大阪大学(大阪府)
    • 年月日
      2011年9月28日
  • [学会発表] 「意味についての懐疑とその解決」2011

    • 著者名/発表者名
      重田謙
    • 学会等名
      第5回哲学ワークショップ(招待講演)
    • 発表場所
      大阪大学(大阪府)
    • 年月日
      2011年8月2日
  • [図書] 『生命と倫理の原理論』(「因果と自由について」)2012

    • 著者名/発表者名
      重田謙(檜垣立哉編)
    • 総ページ数
      221ページ(129-164ページ)
    • 出版者
      大阪大学出版会

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公開日: 2013-07-10  

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