研究課題/領域番号 |
23520027
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
屋良 朝彦 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (90457903)
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研究分担者 |
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)
金光 秀和 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (50398989)
本田 康二郎 同志社大学, ・高等研究教育機構, 嘱託研究員 (40410302)
増渕 隆史 北海道大学, 文学研究科, 助教 (60528248)
松浦 正浩 東京大学, 公共政策大学院, 特任准教授 (70456101)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 合意形成 / コンフリクト・レゾリューション / 不確実性 / 応用倫理学 / リスク |
研究概要 |
本研究の第1の目的は、、FisherやSusskind、Mooreらのコンフリクト・レゾリューションおよび合意形成の手法を習得し、それの各種応用倫理学の分野(医療倫理、科学技術倫理、ビジネスエシックス、コミュニケーション倫理、教育哲学等)への応用可能性を明らかにすることである。 まず、2011年9月4日-5日に桜美林学園伊豆高原クラブにて第1回合意形成研究会合宿を開催した。合宿という形式にしたのは、コンフリクト・レゾリューションの技法のひとつであるメディエーションを、ディスカッションやロールプレイングを通して、演習形式で具体的に習得してもらうためである。それと並行して、各メンバーに研究報告を行ってもらった。研究分担者松浦は合意形成プロセスの倫理的課題を論じた。蔵田、本田はそれぞれ福島原発事故を受けて、リスク論及び学技術政策論における倫理的課題を論じた。金光は技術者倫理教育の課題を論じた。 次に、2012年3月21日に桜美林大学淵野辺キャンパスにて第2回合意形成研究会を開催した。最初に、坂井昭宏桜美林大学教授が、「市民の義務と徳 ―万引き多発校と校名公表問題―」というタイトルで、市民と行政、学校における万引き対策に関する倫理的課題について論じた。次に、屋良が、医療倫理における意思決定論について論じ、松浦が公共政策における合意形成の課題について論じ、金光が技術者倫理教育の課題について論じた。その後、招待発表として、大阪大学の大北が公衆衛生論を論じ、松本がハーバーマスやアーペルにおける討議倫理について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、応用倫理学の各領域(医療倫理、科学技術倫理、ビジネスエシックス、コミュニケーション倫理、教育哲学等)に、FisherやSusskind、Mooreらのコンフリクト・レゾリューション及び合意形成の方法論を組み込む可能性を検証することである。特に、不確実なリスクへの対策に関して合意形成は困難となるが、その問題に対してコンフリクト・レゾリューションがどの程度有効であるかを検証する。 初年度においては、各研究メンバーが、それぞれの領域においてどのような不確実性の問題があるかを認識することを中心に研究してもらった。特に、昨年度は福島原発事故があり、科学技術行政として、不確実なリスクに対してどの様な態度をとるべきであったかという議論が中心になった。 ところで、初年度に研究メンバー全員に対して提示した課題として、コンフリクト・レゾリューション及び合意形成の方法論を習得することを掲げた。それというのも、研究代表者屋良と分担者松浦はそれらの方法論の専門家であるが、他の分担者は各応用倫理学分野の専門家であるとはいえ、コンフリクト・レゾリューション及び合意形成に関してはそれほど詳しくないからである。というのも、そもそも応用倫理学において私の研究目的に示されるような研究はこれまでほとんどなかったからである。したがって、初年度はコンフリクト・レゾリューション及び合意形成の方法論をメンバー全員が習得することを、第1の課題とした。
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今後の研究の推進方策 |
各年度に2回づつ研究会を開催する予定であるが、そこでは下記の課題を中心に研究成果の発表をしてもらう。 第1に、初年度において、各メンバーはコンフリクト・レゾリューションの方法論の理論面を習得したが、今後はその実践的・応用的研究を習得してもらう。その後、それぞれの応用倫理学領域においてその有効性を検証してもらう。 特に、各メンバーがまだ研究に着手していないのは、各自の応用倫理学の領域において、不確実なリスク関する合意形成がコンフリクト・レゾリューションの方法論でどの程度達成できるかどうかを検証することである。研究代表者屋良は医療倫理の領域においてその問題に関して6年間ほど研究を継続しているが、他の研究分担者はその研究に着手してまだ日が浅い。他のメンバーがコンフリクト・レゾリューションの方法論に習熟した後にこの課題に着手してもらう。 第2に、研究実施計画において、「不確実性における合意形成のカリキュラム作成」という課題を提示しておいたが、それに次年度から着手する。そこでは、コンフリクト・レゾリューションのロールプレイングの実践をビデオで撮影し、それを組み込んだマルチメディア教材を作成する。教材の内容は、具体的には、(1)コンフリクト・レゾリューションの理論的研究、(2)応用倫理学諸分野への適用、(3)ロールプレイングの実践と分析の3部から成る。 第3に、研究実施計画において、「Conflict Resolutionのリスク論への適用とフィールドワーク」という課題を提示しておいてが、研究代表者屋良は、その具体的な方法論にさらに習熟するための研修を受け、フィールドワークを行う。 最後に、科研最終年度には、3年間の全活動の記録と研究成果をまとめた研究活動報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度および最終年度に使用予定の研究費の使途は下記の通り。(1)各年度ごとに2回づつ研究会を行うが、それに招聘する外部講師の謝金および旅費として。(2)マルチメディア教材作成のための編集ソフトの購入費として。(3)国内外の応用倫理学関連学会への参加費及び旅費として。(4)科研最終年度には、3年間の全活動の記録と研究成果をまとめた研究活動報告書を印刷し、各関連研究機関や研究者に配布するが、その印刷費と送料として。(5)研究遂行のための物品(書籍、パソコンおよびその周辺機器、ソフトウエア、文房具等)の購入費として。
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