研究課題/領域番号 |
23520029
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
森岡 正博 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80192780)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生命の哲学 / 生命倫理学 / 環境哲学 |
研究概要 |
本年度は、「生命の哲学」に関する研究の全体像を探りながら、同時に、個別の研究課題について国際的な交流を行ない、その成果のいくつかを学会発表し、論文として刊行することができた。まず、「生命の哲学」の中心課題である「幸福」と「尊厳」の関係性について、現代の脳科学の知見を参照しつつ、それを倫理学の視点から解明して新たな「尊厳」概念を提唱する発表を、米国・ニューヨーク市のカーネギー倫理センターで開催された国際集会において発表した。それをもとに英語論文と日本語論文を刊行した。また、ドイツ・ルードヴィヒスハーフェン市で行なわれたドイツ社会科学会にて、「生命の哲学」の視点から見た「ペルソナ」論についての発表を行ない、それをもとにした論文を執筆投稿した。またその研究成果を和辻哲郎の「ペルソナ」論と比較検討した日本語論文を刊行した。また、かねてより研究を蓄積していたナラティブエシックスと「生命の哲学」の関連について検討した英語論文(共著)が刊行された。また、以上の研究成果をまとめる形の総説論文「生命の哲学」を日本語で刊行した。これらの研究により、本研究の基礎的なパースペクティブを固めることができたと考えている。 また、本学現代生命哲学研究所より刊行しているJournal of Philosophy of Lifeに、世界から投稿のあった7本の論文を刊行することができた。これらの論文をもとにして、「生命の哲学」に関する世界的な研究ネットワークを形成する準備が整いつつあることも本年度の成果である。また、同研究所の紀要として『現代生命哲学研究』を刊行し、国内の若手研究者の育成にも着手しはじめた。 以上が、本年度の研究成果の概観である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記された内容について、おおむね達成することができたと考えている。まず、「生命の哲学」の全体像について、海外の諸機関を訪問し、国際集会で交流を行なうことによって、現在の最先端の議論を収集して研究に役立てることができた。これは今後の本研究の基盤となるものである。また、生命倫理学的なアプローチから「生命の哲学」に迫る試みと、比較文化論的なアプローチから「生命の哲学」に迫る試みを行なうことができた。さらに、本学現代生命哲学研究所における国際的共同研究等も予定通り進めることができた。当初に計画していた「生命の意味」を問う試みについては大きな進展を見ることができなかったので、これについては将来の課題としておきたい。全体として、国際学会での発表、論文の刊行を、予想よりもハイペースで行なうことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、1年目に達成された研究成果を生かしつつ、さらにいくつかの新しい角度から「生命の哲学」の諸問題に迫っていく予定である。まず、本研究をさらに国際的に進展させるため、2012年9月から10月にかけて米国・ミシガン大学を訪問し、日本学研究所を中心として周辺の諸大学をも含めた数カ所で行なわれる講演会・学術集会で研究発表を行ない、研究交流を実施する予定である(現在その詳細を詰めているところである)。講演・研究発表内容としては「生命の哲学」を中心としつつ、それと日本文化論との関連、生命倫理学・脳神経倫理学との関連について考察する予定である。また「生命の哲学」とセクシュアリティの関連性についても共同研究の可能性を探ることにする。 また理論的な考察においては、将来世代産出の義務についての哲学的考察をさらに進展させることにする。この論点についての重要な先行研究であるDavid Benatarの所論の詳細な検討を行ない、論文として発表したいと考えている。さらに、ジェンダーとの関連において、選択的中絶の倫理的問題と法的問題の接点を解明する考察を、具体的な裁判事例を参照しながら行なうことを予定している。それによって「生命」についてのさらなる多角的解明が可能になると考えている。現代生命哲学研究所における活動についても初年度同様に精力的に進めていきたい。また初年度同様、芸術・美術に現われた生命観・自然観の研究も引き続き行なっていくことにする。 これらの研究を同時並行的に進めることを通して、本研究の基礎概念である「生存肯定」の内実に哲学的に迫っていくことにしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に基づき、以下のような使用計画を立てている。まず物品費として、研究上必要となる「生命の哲学」関連図書を購入する。旅費として、海外旅費(米国ミシガン大学等への往復旅費)および資料収集のための国内旅費を使用する。また国際学会・集会での発表原稿・配付資料の英訳・校閲のために翻訳校閲料を中心とした人件費・謝金を使用する。その他、ノート・ファイル類の購入に若干の金額を使用する。以上が次年度の研究費の使用計画の概要である。
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