研究課題/領域番号 |
23520030
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
吉川 孝 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20453219)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 現象学 / 倫理学 / 価値 / 共感 / 行為 / 生き方 / 責任 / ケア |
研究概要 |
本年度は、著書『フッサールの倫理学 生き方の探究』(知泉書館、2011年11月)を公刊した。この著作は、フッサール現象学のなかに現象学的倫理学の可能性を読み取ろうとするものである。フッサールがブレンターノやドイツ観念論(カント、フィヒテ)の影響のもとで、実践理性としての学問としての倫理学を形成する過程を明らかにし、その現代的意義を検討した。しかも、フッサールとミュンヘン・ゲッティンゲン学派、ハイデガー、レヴィナスなどの実践哲学との関連を主題にした。この著作は、現象学的倫理学のなかにミュンヘン・ゲッティンゲン学派を位置づけるための基礎作業の役割を果たしている。著作のなかでは、ミュンヘン・ゲッティンゲン学派のなかのプフェンダー、シェーラー、ライナッハなどを扱った章を設定したほか、フォン・ヒルデブラント、ダウベルトなどにも言及した。これらの部分は、現象学的倫理学という背景から、個々の現象学者を論じる研究へと踏み込んでいる。 さらには、間文化現象学のプロジェクト(立命館大学)のシンポジウムにおいて「共感と価値 M・シェーラーにおけるケアの倫理」を発表した。「共存」をテーマとするシンポジウムのなかで、ハイデガー、メルロ=ポンティ、尾高朝雄などの研究発表とのセッションとなり、現象学的倫理学が「共存」をめぐる思考を広く展開していることを確認した。また、シェーラーの共感論が、現代の「ケアの倫理」とも対話が可能であることを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公刊した著作著書『フッサールの倫理学 生き方の探究』は、本研究の根幹をなす部分であり、現象学的倫理学の枠組みの中でミュンヘン・ゲッティンゲン学派の位置づけを明らかにした。さらには、シェーラーの共感論を「ケアの倫理」と関連づける見通しも得ることができた。したがって、当初の計画以上の達成度とも言える。ただし、著作以外の成果をほとんど発表できなかったので、全体としては「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、ミュンヘン・ゲッティンゲン学派を、現象学的倫理学のなかに位置づける見通しがついた。そのため、今後は、シェーラーの共感論、インガルデンの責任論、ライナッハの社会的行為の理論などの個別研究にとりかかり、その現代的意義を検討することになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、上記の研究を推進するにあたって必要な書籍を購入する。ミュンヘン・ゲッティンゲン学派に直接関連する文献のみならず、「共感」「責任」「行為」などのテーマに関連する文献を入手する必要がある。さらには、いくつかの学会での成果発表や図書館での資料調査のため、旅費を使用する予定である。
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