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2013 年度 実績報告書

現象学的倫理学としてのミュンヘン・ゲッティンゲン学派の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520030
研究機関高知県立大学

研究代表者

吉川 孝  高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20453219)

キーワード哲学 / 倫理学 / 現象学 / 共感 / 責任 / 行為 / 感情 / 理性
研究概要

研究最終年度にあたる平成25年度は、現象学的倫理学の意義を、現代倫理学との対比の中で明らかにする研究を行った。とりわけ、フッサールを中心とする現象学的倫理学が、人格のアイデンティティに根ざした倫理学であることを、B.ウィリアムズやH.G.フランクファートの倫理学を援用することで明確化することができた。功利主義と義務論という近代道徳哲学が、普遍性、公平性を原理とするという共通点をかかえている。これに対して、現象学的倫理学は、個人の生き方を考察するものであり、道徳的価値の普遍性を前提とするわけではない。フッサールの「使命感」の分析においては、個人の生き方の指針が、善き生の形成をめぐる実践において大きな役割りを果たしている。
さらには、現象学的倫理学は、共感とケアのもっている倫理学的意義を再評価することを明らかにした。とりわけシェーラーの共感論は、自分にとって大切な人との関係を重視する「ケアの倫理」と多くの論点を共有している。しかも、現象学の立場においては、われわれの共感の配慮となる対象は、一義的に決まっているわけではなく、個人が置かれた状況や歴史に依存することになる。こうした立場は、道徳的配慮の対象となるパーソンの基準を客観的に設定しようとする応用倫理(パーソン論)とは異なるアプローチの倫理学として、大きな可能性を秘めている。
以上にかかわる研究成果を、学術論文3本、研究発表6回において公開することができた。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 共感の道徳的価値をめぐって: M.シェーラーにおける「ケアの倫理」の可能性2014

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 雑誌名

      行為論研究

      巻: 3 ページ: 37-50

  • [雑誌論文] 使命感と合理性――フッサールにおけるアイデンティティの倫理学2013

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 雑誌名

      現象学年報

      巻: 29巻 ページ: 167-174

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 共感と合理性――パーソン論に対してフッサールとシェーラーの倫理学は何をなしうるか?――2013

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 雑誌名

      多極化する現象学の新世代組織形成と連動した「間文化現象学」の研究

      巻: 1 ページ: 143-152

  • [学会発表] 意志から愛へ――行為の観点から見たフッサール倫理学の発展2013

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 学会等名
      研究会「フッサールの行為論」
    • 発表場所
      立正大学
    • 年月日
      2013-12-20
  • [学会発表] 生き方、ケア、合理性――フッサール倫理学の現代的意義――2013

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 学会等名
      フッサール研究会特別企画・大阪大学臨床哲学研究会共催シンポジウム
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2013-07-27
  • [学会発表] 物語、生き方、真理――ナラティヴ・アプローチの可能性2013

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 学会等名
      第39回高知女子大学看護学会
    • 発表場所
      高知県立大学
    • 年月日
      2013-07-20
  • [学会発表] パーソンと生き方の問い フッサールとシェーラーの「人格に根ざす倫理学」

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 学会等名
      日本哲学会
    • 発表場所
      お茶の水女子大学
  • [学会発表] アクラシアと責任――現象学的アプローチ

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 学会等名
      第4回「行為論研究」報告会
    • 発表場所
      新潟大学
  • [学会発表] アクラシアの現象学――実践的合理性を再考する

    • 著者名/発表者名
      吉川孝
    • 学会等名
      日本現象学会第35回大会シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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