本研究から得られた第一の成果は、「根源的な身体衝動」をめぐるニーチェの一連の思想に「言語論」的な観点からアプローチすることを通じて、ニーチェの哲学を「情動的言語使用の哲学」として新たな視点から体系的に再構成したことである。 また第二の成果として、合理的な言語使用を前提とした「他者の了解」から身体的共感に根ざした「他者の承認」へと問題の中心をシフトさせつつある現代の「コミュニケーション理論」の展開、とりわけその「承認論的転回」をめぐる議論との比較検討を通じて、「情動的言語使用の哲学」が持つ現代的な意義を明らかにしたことが挙げられる。
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