研究課題/領域番号 |
23520034
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
清水 正之 聖学院大学, 人文学部, 教授 (60162715)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本思想史研究 / ドイツ文献学 / 解釈学 / 芳賀矢一 / 村岡典嗣 / 和辻哲郎 / 土田杏村 / 思想史 |
研究概要 |
当研究は、近代学問として成立した日本思想史研究という領域が、ベックらのドイツ文献学の摂取によって成立したこと、さらにその後もドイツ文献学の影響をうけつつ新たな形成がおこなわれたこと、その過程と展開を研究対象とするものである。そののち思想史研究はさらに解釈学への関心によって、研究の領域と問題関心を深化させることとなった。当研究は、これらの過程で、思想史研究の創設に寄与した村岡典嗣や和辻哲郎・土田杏村らの文献学・解釈学の摂取と受容を、日本近代の哲学史・倫理学史の見取りのなかに再配置して、その意義を考察することを主な目的としている。そのために、ドイツ文献学と解釈学の間の連関および相違点そのものの問題の考察の深化もはかる。またあわせて、東アジア、とくに韓国、中国、台湾では、これまであまり関心が寄せられてこなかった文献学・解釈学に、昨今あらためて関心が寄せられ、伝統的思想の再解釈と連関づけるという気運が生じていることも、この研究課題の視野にいれるものである。 初年度は、あらためて全体の計画の進展をはかるべくその細部を検討し、その上で、実際に芳賀矢一がウーゼナーらの一国文献学を採用した経緯の調査、村岡典嗣の文献学受容、唯物論的立場からの思想史研究のディルタイへの関心の検討、土田杏村の思想史像および東アジア哲学史の構想の検討等を、段階的に調査、考察することを目指した。 芳賀の文献学受容、土田の思想史像については、ディルタイ協会での講演、論文、あるいは中外日報での連載記事等で公けにし、またとくにその東アジア哲学史の構想については、台湾中央研究院での土田をめぐる発表.論文であきらかにした。研究の途中経過は、ほぼ予定通り達成し、成果として発表できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、芳賀矢一のドイツ文献学の受容の経緯と内実、芳賀があえてウーゼナーらの一国文献学を採用した経緯の調査、村岡の継承と深化、唯物論的立場からの思想史研究のディルタイへの関心の検討、土田杏村の思想史像、東アジア哲学史の構想、等を段階的に調査、考察することを目指した。芳賀・村岡の文献学受容、土田の思想史像については、ディルタイ協会での講演、論文、あるいは中外日報での連載記事等で公けにし、またとくにその東アジア哲学史の構想については、台湾中央研究院での土田をめぐる発表.論文であきらかにした。 研究の途中経過は、ほぼ成果として発表できたが、三枝博音らの唯物論的立場の思想史像については、上記のディルタイ協会誌にて、若干触れることができたが、やや未考察の点を残している。全体計画からみれば、初年度の研究計画は、ほぼ達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画二年次あたる24年度は、前年度未達成の若干の計画を早急にまとめるととともに、当初計画のとおり、日本思想史研究の側の哲学的関心として次第にあらわになる「社会的存在論」への関心の深化を、土田杏村や和辻哲郎に添いながら、倫理思想史的に追求する。また近代日本の問題を、最近の台湾・中国での思想史的叙述の形成における文献学・解釈学への再評価と比較し検討し、東アジアでの伝統的思想の再叙述・再構成という観点からの文献学・解釈学受容の現在という問題意識から調査検討する。またドイツ文献学と解釈学との哲学史的連関についても、従来の調査・考察を続けて、さらに独自の見解を作り上げたい。 こうした計画を遂行することで、文献学・解釈学の受容と摂取を、近代日本哲学史・倫理学史の一コマとして位置づけ、思想史研究のなかから胚胎した哲学的関心あるいは哲学的体系化の萌芽を、ただしく評価し位置づけてみるという当研究の目的を達成することが可能になるだろう。著書等によって、研究成果をひろく公表することをさらに目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に計画している日本思想史研究の哲学的関心の考察として、文献学・解釈学の思想史方法論としての受容が、次第に姿をあらわす「社会的存在論」の形成の倫理思想史的検討をおこない、また最近の台湾・中国での思想史的叙述の形成における文献学・解釈学の再評価の意味の考察、さらにドイツ文献学と解釈学との哲学史的連関についての一層の考察を遂行しつつ、従来の調査・考察等をふまえ、研究計画を一層進展させる。 この年度は、当研究計画にとっての重要な未入手の資料・書籍の入手・購入を目指してその購入費を研究費に計上した。また、研究上必要な書籍・資料が所在する国内の機関・図書館にて調査する二度の国内旅費を計上している。また当年度は、とくに中国での短期の調査をおこない、東アジアでの文献学・解釈学の受容をめぐる知見をうることをめざす。また、ドイツ文献学・解釈学の受容については一層の知見の深化をめざして、前年度につづき、ドイツでの資料調査を計画しており、これら国外旅費を計上している。その他研究遂行のための消耗品の購入費用を計上している。
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