研究課題/領域番号 |
23520038
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
荻野 弘之 上智大学, 文学部, 教授 (20177158)
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研究分担者 |
早川 正祐 上智大学, その他の研究科, 研究員 (60587765)
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キーワード | アリストテレス / 倫理学 / 徳論 / ヘレニズム |
研究概要 |
研究の二年目としては、ほぼ順調に進捗している。 (1)8月下旬にギリシャに出張し、アリストテレスゆかりの北ギリシャ・テサロニキ大学、及びアテネ大学、またデルフィ考古学博物館などで、ギリシャ人研究者と意見交換し、最新の考古学的発掘資料を含めた詳細な資料調査を実施した。 (2)倫理学書の本文研究としては、『エウデモス倫理学』第7巻の「フィリア論」を集中的に研究した。この巻は本文の校訂上の問題が山積しており、比較的研究が遅れている分野でもあるが、この際に大学院博士課程の佐良土茂樹君の助力を得た。 (3)「賢慮」(フロネーシス)の概念が、両倫理学書の発展を考える上で一つの重要な鍵概念になるが、この概念が経営学の方面でも注目されていて、野中郁次郎(一橋大学経営学大学院教授)や鵜養幸雄(立命館大学公務研究科大学院)などの研究者とも意見を交換する機会を得た。この成果は哲学会の秋の研究発表大会でも報告することになった。 (4)さらにこの問題は、精神病理学者の間でも関心を持たれていて、精神病理コロックで(於:東京大学)で報告したのを機に晴和病院で懇談し、さらに『臨床精神病理』誌に寄稿を依頼された。 (5)さらに早川を中心として、臨床哲学やケアの倫理学における友愛の問題を深めると同時に、現代の行為論哲学との突合せを進めることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会の実施とその記録、文献の収集と資料調査など、予定していた活動はほぼ順調に推移している。海外の研究者との交流も進んでいる。2012年から13年初頭にかけて、英語での大きな研究書が3冊、仏語で2冊、と『エウデモス倫理学』については欧米で続々と成果が公表されつつある。本研究が国際的な水準を鑑みたときに時宜にかなった研究であることが証明されたわけであるが、これらの研究成果を参照しつつ取り入れるために、時間が必要であることに変わりない。
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今後の研究の推進方策 |
早川氏がPDを辞めて5月から東大で特別研究員に就任することに伴い、新たに佐良土茂樹氏をPDに迎えることになった。同氏は、荻野が指導した学生でもあり、アリストテレス研究の新進として、ここ2年ほど学会発表や雑誌論文の寄稿を積極的に行ってきた。彼を新たに共同研究者に迎えることで、一層の研究の進展を図ることができる見通しである。早川氏には引き続き連携研究員として活動してもらう予定。 ロンドン大学のウルフ教授などともメールで連絡を取り合い、研究情報を交換するほか、国際的な研究集会の企画なども念頭においている。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:レーザー・プリンタの買替えの可能性がある。 旅費(海外):夏期休暇を利用した海外の研究者との交流、意見交換、資料調査を計画中だが、次年度は国内研究者との連携も同時に強化したいので、国内出張の分も確保したい。 消耗品費:いくつかの古書を含めた資料を国内外の書店から購入する。古くて著作権の切れた名著を写真製版によって復刻する版が増えているので、重要な歴史的文献の調査をすることが可能になりつつある。
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