本研究において私は、ダーウィン主義の時代とも呼べる今日、M・シェーラーを中心にして、主に20世紀の前半に展開された現象学的人間学がどのような科学論的意義を有しているか、再評価することを試みた。研究の手順としては、まず、現象学的人間学を代表する哲学者たちが、進化論に対してどのような態度をとっていたのかということについて、原典資料に基づいて歴史的な整理をおこなった。つぎに、現象学的人間学と、進化論の成果に基づいて認識論や倫理学を構築しようとしている現代の「進化論的認識論」、「進化倫理学」との比較・対照をおこない、両者の類似性と差異を明らかにした。
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