研究課題/領域番号 |
23520047
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
高橋 雅人 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90309427)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | プラトン / 『政治家』 / 問答法 / 政治的知 / 倫理的知 |
研究概要 |
研究計画書に記載のとおり、プラトンの『政治家』のテキストの読解を註釈書等を参考に進め、「政治家とはどのような人か」また「政治術とは何か」という探求の転換点に位置する「神話」の解釈について一定程度の見通しを得た。この「神話」で語られる時期を二区分とする伝統的解釈に対して三区分とする解釈が提起されていたが、テキストの読解を通じて、三区分解釈が無理であること、しかし二区分解釈にも若干の修正を加えるべきだという理解に達した。この「神話」の理解が研究目的のいわば前段階として必要であることは、テキストの読解を通じて明らかになったことである。本研究の目的は、政治家の持つべき政治的・倫理的知がいかなるものであるかの解明であるが、その目的のためには「神話」において示される「政治家とは神に比すべき養育者ではない」というプラトンの考えが示唆するものが大きい。というのも、「神話」は政治家がたとえ優れた知識を持っていなければならないとしても、非支配者たちと同じ人間であることを宇宙論的規模で明らかにしており、そのことは人間の自由を奪わないような政治があるべきそれであることを示しているからである。また、この「神話」は『政治家』の転換点に位置するので、この「神話」の理解は『政治家』という対話篇の統一的理解という本研究のもう一つの目的にも資するところが大きい。この知見は平成23年度中には論文として公にすることはできなかったので、今年度以降に公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
順調にプラトン『政治家』のテキスト読解が進み、また『政治家』という著作理解に必須の神話解釈について一定の知見を得たのは、研究計画当初にはない成果であった。しかし海外での資料収集が出来なかった点、また研究成果を公にできなかった点で、やや遅れていると自己点検する。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られたプラトン『政治家』の「神話」に関する論考を公にする。また、研究計画書のとおり、海外での資料収集を行い、『政治家』における問答法の特徴を、中期対話篇である『国家』との比較により、明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
夏にイギリスのケンブリッジ大学に滞在し、資料を収集する予定であるので、旅費に主に使用する予定である。また、英文での研究成果発表を視野に入れているので、謝金の支出も予定している。なお平成24年度の支出には、平成23年度未使用分も合わせて使用する予定である。
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