研究課題/領域番号 |
23520047
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
高橋 雅人 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90309427)
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キーワード | プラトン / ポリティコス / 問答法 |
研究概要 |
プラトン『ポリティコス(政治家)』における「神話」の検討を続けた結果、神が人間のすべての面倒を見る時代ではなく人間が人間の世話をする時代であることを述べるこの「神話」が、『政治家(ポリティコス)』の展開にとってのみならず、プラトン後期哲学における神と人間の関わりというより大きな問題の展開にとっても、重要な意義を有することを明らかにした。 また、『ポリティコス』と『国家』との関係を検討し、この二つの対話篇の位相が異なるという解釈を退け、『ポリティコス』における理想の政治家が『国家』における理想国の守護者ではなくてその創設者であることを示した。 この双方の知見から示唆されるのは、プラトン哲学における「始まり」の意義である。すなわち「人はいかにして哲学を始めるのか」、あるいは「人はいかにして政治に携わり始めるのか」という問いが、プラトンにとって重要な関心事であり、だからこそ魂を「自ら動かす動」とする定義が後期において前面に出てくるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プラトンの『政治家(ポリティコス)』という一つの対話篇の理解を目指す本研究の範囲を超えて、プラトン後期哲学における神と人との関わりというより大きな問題を研究の射程に収めることができたため、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
『ポリティコス』の他の対話篇との関係がある程度明らかになったので、この知見をふまえて、今後は『ポリティコス』という対話篇そのものの理解を深めるべく、この対話篇の方法である分割法が『国家』における問答法とどのような関連にあるかを考察の対象とする。その際、「エイドスに即して」なされる分割の「エイドス」の理解が求められるのはもちろんであるが、さらに初期・中期対話篇で顕著だった「何であるか」と「どのようなものであるか」の二つの問いの区別が、分割の方法とどのように関連するのかをも問題とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果発表のため海外学会への参加を考えていたが、取りやめたため。 海外学会での発表、あるいは研究成果を英文で発表するための校正に用いる予定である。
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