研究課題/領域番号 |
23520053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辛 賢 大阪大学, 文学研究科, 講師 (70379220)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 太玄 / 邵雍 / 揚雄 / 暦年法 / 皇極経世 / 元会運世 / 宋代 / 易学 |
研究概要 |
初年度は、北宋・邵雍の易学とその後学である南宋・張行成の『翼元』について検討を行った。邵雍の代表的著述である『皇極経世書』は一種の歴史年表であり、その暦年表は周知のように「元会運世法」と呼ばれる邵雍独自の暦法によって構築されている。邵雍の「元会運世法」に関する研究は、これまでたくさんの先行研究が発表され、その数理構造が十進法によって進行されていることが明らかになっている。ただし、元会運世法による暦年構造が易の六十四卦システムとどのように結合しているのかという問題については、隔靴掻痒の感をぬぐえないものがある。そこで、この問題について検討をおこなった結果、北宋の邵雍によって創案された元会運世にもとづく暦年法は、暦年を先天易の六十四卦次序に結合させ、さらに八卦をカテゴリーとする周期サイクルを提示するものであった。さらに上下八卦の定数を互いに組み合わせる方法によって、六十四卦全体における元会運世の暦年数を機械的に算出し、蔡元定の「経世天地始終数図」と全く一致していることが確認できた。そして、六十四卦における各周期の積算数からは、一定の数理的規則性を見出すことができるが、それは12と30が交互に演算されていく展開をなしており、さらに前漢の揚雄が著した太玄易にみられるような、一二三の組み合わせによる万物のカテゴリーを見いだしていた数列構造を連想させられるものであった。以上のような邵雍易学に関する考察に並行して、邵雍の易学を引く張行成の『翼元』についても併せて検討を行った。『翼元』は、揚雄の『太玄』の数理構造を詳述したものであるが、これまでほとんど顧みられることもなく、その資料的価値が見過ごされてきた。ところが、その内容は、司馬光・邵雍すら曖昧にしてきた太玄易の数理構造を見事に突き止めるものであり、また『太玄』の八十一首七百二十九賛をより明確な数理構造として浮き彫りにするものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにおおむね順調に進んでいると言える。邵雍とその後学に関しては、『皇極経世書』における邵雍の歴史観及び先天図の淵源について検討を行い、一定の成果を挙げることができたと判断される。だが、これらの問題をめぐる周辺研究の領域はかなり広く、今後、それらの周辺研究を進める必要がある。たとえば、邵雍の暦年法は揚雄の『太玄』に非常に近い構造性を有しており、それには漢代から伝わる河図洛書の数理的メカニズムに極めて関連が深いものであることがうかがわれる。実際に蔡元定の子である蔡沈は、著述『洪範皇極内篇』において、邵雍の易学と洛書との関連を述べており、今後、検討を進める予定である。ただ、当初予定していた唐宋における暦法について考察が進んでおらず、今後はこの問題も含めてさらに研究を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、前年度の研究を踏まえて、引き続き、唐宋における象数学派に関する検討を進める予定である。図書学・象数学とされる学派、とくに周敦頤の太極図説や劉牧の河図洛書説などを中心に、その易説・理論に関する詳細な分析を行い、さらに易説にあらわれる思想的問題を浮き彫りにすることに注力する。さらに南宋の代表的な象数学派である朱震の易学について考察を行い、宋代における「象」「数」の哲学的展開について考察を深めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、前年度とほぼ同じく、書籍購入と資料調査のための旅費に充当することになる。書籍に関しては、唐宋における易学・術数学・経学関連の書籍を購入する予定である。
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