研究課題/領域番号 |
23520053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辛 賢 大阪大学, 文学研究科, 講師 (70379220)
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キーワード | 邵雍 / 邵康節 / 朱子 / 易学 / 皇極経世書 / 先天 / 宋代 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度に引き続き、北宋の邵雍易学に関する研究を行った。漢易の六日七分説は、六十四卦中の四正卦(坎・震・離・兌)を事実上排除することで、六十卦のみが暦面の数理に組み込まれるという変則的な方法が取られているが、こうした易を暦に合わせる漢代的方法は、北宋・邵雍の易学に至ると、逆に暦を易の数理性に引き寄せる方向へと一転することになる。暦を易の数理性のなかに組み込むことで、両者の整合性を図ろうとする試みは、じつはすでに漢代にみられる方法であり、その方法論の徹底化が宋代において推し進められることになる。そこで、平成24年度では、邵雍の先天易学における元会運世法の数理構造を明らかにし、その数理構造を支えている理論的背景について検討を行った。邵雍の先天易学は、道士の陳摶から伝わったとされる先天図をもとに定立されたとされる。「先天図」の原本はすでに失われていまに伝わらないものの、のちに復元された四種類の図が、朱子の『周易本義』に伝わっている。邵雍は「終日言いて未だ嘗て是れより離れず。蓋し天地万物の理、尽く其の中に在ればなり」(張行成『易通変』「序」)と述べているように、先天図の存在は邵雍易学の形成に大きな影響を与えていたであろうと思われる。いまは先天図の全貌を知ることはできないものの、邵雍易学における方法論的特徴は漢代的方法論を受け継いでいること、そしてその方法論をより徹底的に推し進めていることが見て取れるものであった。その詳細については、「邵雍の「皇極経世」とその背景-理数を求めて-」(『林田愼之助博士傘寿記念 三国志論集』(三国志学会)、2012年10月)にて公開されている。また邵雍易学が朱子学に及ぼした影響を知るための基礎研究として、朱子語類巻百「邵子之書」の翻訳を進め、その成果の一部を公開した。邵雍易学に対する朱子の理解を知るための手がかりになるものと期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の研究課題である、邵雍易学に関する研究はおおむね順調に進んでいると思われる。『皇極経世書』における「元・会・運・世」の暦面構造の特徴とその来源問題について考察を行い、その詳細についてはすでに論文として公開している。検討を行った結果、邵雍易学が漢代揚雄の太玄易の影響が窺われ、この問題を視野に入れながら、今後の課題を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
邵雍易学に引き続き、宋代における河図洛書関連の議論について探っていきたい。河図洛書は、宋明の両代においてその哲学的意味をめぐり大きな論叢を巻き起こしており、宋代易学研究において欠かすことのできない重要な位置を占めている。そこで、平成25年度では、それらの問題に関する議論がどのような方向へ進んでいき、いかなる思想史的意味をもたらしたのかについて考察を行うことにする。また、前年度に引き続き、朱子語類巻百「邵子之書」の翻訳を並行して進めることにする。なお、最終年度にあたるため、三年間の研究内容を整理し、研究報告書を作成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
課題関連の書籍購入および調査旅費に充当し、また三年間の研究成果報告書の作成を予定している。
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