本研究は、マテオ・リッチが中国人と行った対話を記録した『畸人十篇』について、その成立過程と思想内容を分析した上で、その朝鮮や日本に対する思想的影響について解明したものである。特に、該書の諸版本の異同に関する研究や明末刊本と清末刊本との異同に関する研究は、従来全く行われてこなかったもので、本研究の大きな成果である。また、思想内容としては、特に死生観をめぐってリッチと中国人との間で盛んな議論がなされていたことを明らかにした。更に該書の精密な現代語訳と詳細な注釈を行った点も、本研究の成果の一つと言える。
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