研究課題/領域番号 |
23520056
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
南澤 良彦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50304465)
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キーワード | 科学技術 / 社会思想 / 天文暦法 / 戊寅暦 / 太史令 / 将作大匠 |
研究概要 |
本年度は隋唐時代における当該研究課題について研究した。具体的には、(1)南北朝時代の儒学と天文暦法との伝統を継承・発展させた実り豊かな時代であった隋唐時代における天文暦法を社会思想的に研究した。(2)さらに視野を天文暦法から広げて、隋唐時代の科学技術を社会思想的に研究した。(3)そして、絶対的な権威が見当たらず価値観の多様な社会という意味では、21世紀の我が国にも通じる隋唐時代における「科学技術(者)の社会的意義」の問題を研究した。 (1)については、唐初の太史令であった傅仁均の作成した戊寅暦に着目した。戊寅暦は定朔法を正式に採用した最初の暦法であるが、その有効性が繰り返し論じられたあげく平朔法に改められる。必ずしも科学に立脚した議論ばかりではなかった、その経緯を詳細に検討することで、当時の天文暦法が科学と強く関係しているが、同時に社会とも深く関係している実態を解明した。 (2)については、天文暦法に直接関わる科学技術系官僚として太史令に、また天文暦法と直接ではないが、科学技術系官僚の頂点に位置づけられる官僚として将作大匠に、それぞれ着目し、秦漢時代から隋唐時代に至るまでその職にあった人物を総合的に研究し、科学技術と社会との関係性に関する諸様態を解明した。 (3)については、(1)(2)の研究成果から考察を行い、隋唐時代においても今日同様、科学技術が純粋な学問研究の対象であるばかりでなく、政治経済や思想イデオロギーに翻弄されるものでもあり、科学技術者も科学技術が発達すればするほど社会的責任をより深く自覚していったことを例証的に解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、中国の先秦から隋唐に至る科学技術(者)の直面した諸問題を、天文暦法の分野を中心として、社会思想的に研究することを目的とし、時代を追って行う計画とした。本年度は、隋唐時代を扱うとしたその研究計画をほぼ達成している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はその研究目的及び研究計画に基本的な修正は必要ないが、実地調査および在外調査研究の重要性に鑑みて、3年間の研究成果を精査する次年度においても国内外での中短期滞在による調査研究を行う。そのため、研究費は極力旅費に傾注する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究計画遂行に要する仕事量・必要経費とこれまでの3年間の研究成果の総まとめを行う次年度の研究計画遂行に要する仕事量・必要経費とを再検討し、当初予算の配分を勘案した結果、上記「次年度使用額」相当の金額を本年度から次年度に移すこととした。 国内外での中短期滞在による調査研究を行うための旅費に充てる。
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