研究課題/領域番号 |
23520059
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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キーワード | 鄒守益 / 陽明後学 / 東廓鄒先生遺稿 / 鄒東廓先生詩集 |
研究概要 |
本研究は順調に推移しており、すでに鄒守益の著作の全世界における所蔵状況の調査を終え、それらの大部分について複写を完了している。その過程において、従来、研究者に全く知られていなかった、明版の『東廓鄒先生遺稿』が日本および台湾において現存することを発見し、本年三月に発表した、「『東廓鄒先生遺稿』の諸本について」(『東洋の思想と宗教』第三十一号)において、現存する清以降に刊行された諸本との異同を指摘しておいた。また、これらの明版諸本の発見が、単なる校訂上の資料というのにとどまらず、明代における思想の展開と出版物の流布との密接な関係を物語るものであることを指摘しておいた。このような指摘は、従来思想書に関しては具体的になされてきたことがなかったため、学界に対して一定のインパクトを与えうるものと考えられる。 また、本研究の過程において、従来全く言及されることのなかった、世界に唯一現存する孤本である、国立公文書館(旧内閣文庫)に所蔵されている『鄒東廓先生詩集』を発見することができた。そこに収められている鄒守益の詩の大部分は従来全く知られていなかったものである。そこで本書の内容を学界に知らせるべく、本年三月刊行の「『鄒守益集』未収詩輯佚(一)―内閣文庫蔵『鄒東廓先生詩集』より―」において、同書の前半三分の一について、翻刻を行っている。同書の翻刻は今後二回にわたり行う予定であり、このような新資料の全面的な翻刻は、鄒守益の研究に新生面を開くことが期待されるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、すでに現存する鄒守益著作の所在に関する調査を終了し、それらの複写もほぼ完了するなど、おおむね順調に推移している。また、その過程において、従来全く知られていなかった新資料である、明版の『東廓鄒先生遺稿』や『鄒東廓先生詩集』を発見することができた。 しかしながら、これらの新発見の資料の量があまりにも膨大であるため、その分析および翻刻になお若干の時間を要する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては、従来未発見の資料であった、明版の『東廓鄒先生遺稿』や『鄒東廓先生詩集』を発見することができた。これらの資料の詳細な分析は、既知の資料のみに頼って構成されてきた、従来の硬直した鄒守益思想の研究に新生面をもたらすことが期待できるものである。そのため、今後はこれらの資料の分析、さらには翻刻を行い、学界に対してこれらの資料の意義を紹介することに努めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては、多数の新資料の発見がなされている。そのため、それらを翻刻などの方法によって内外の学界に対して報告することが、至急なされなければならない。そのため、すでに翻刻を開始した資料の残りの部分を紹介すべく、残りの期間内において、翻刻、影印などの手段によって、全力を尽くしていきたい。また、内外の学会においても積極的に紹介していきたい。そのため、次年度使用額が生じることとなる。 上述のごとく、翻刻、影印などの手段によって学界に紹介するための人件費を含む費用が発生する。また、日本国内、国外の学会においてこれらの成果を紹介するための交通費も必要とされる。
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