研究課題/領域番号 |
23520062
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山下 博司 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (20230427)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | ヒンドゥー教 / 南インド / タミル語 / タミルナードゥ / バクティ / 聖徒列伝 / シヴァ神 / シヴァ派 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、南インド・タミル地方に成立・展開したバクティ的ヒンドゥー教(帰依信仰の一形態)の流布と拡大に多大な貢献を為したと考えられる聖徒列伝『ティルットンダル・プラーナム』(略称・通称『ペリヤ・プラーナム』)の和訳作業と本作品の宗教史的および文学的意義を文献学的に検証するための文献学的方法に依拠する試みである。加えて、作品の正しい位置づけの参考に供するべく、本説話文学の対象となっている計63名のナーヤナール(総称ナーヤンマール)の史的実在生の有無や虚構性の検証を行ってきた。 平成25年度までは、具体的な和訳作業に必要な一次資料、研究資料、その他の参考文献の収集と分析に努め、平成26年度から、訳出作業に従事する言わば「本研究」の段階を迎えている。 平成26年度は、前年度に施した重要度に応じた63名のランク付けをもとに、一名ずつの内容要約作業を継続・深化させ、それをもとに重要なものから具体的な訳出作業に従事した。 この間、辛島昇東京大学名誉教授の編集する南インド歴史通観(A Concise History of South India, Delhi: Oxford University Press, 2014)に、63名のナーヤナールを扱う『ティルットンダル・プラーナム』を含む南インドの10~12世紀頃の宗教文学について、本研究計画による新知見を交えて記述し、共著として出版した。 平成26年度の研究成果としては、上記の英文による出版に加え、筑摩書房(ちくま新書)から、インド思想史の古代的側面を扱った『古代インドの思想』を単著として出版した。本書において『ティルットンダル・プラーナム』への直接的言及はないが、そこに至る思想史的な流れが詳述されており、その上に本作品が成ったことが間接的に導かれるとともに、本研究計画による成果が盛り込まれた内容になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画の進捗には一次資料に加えて様々な研究資料の蓄積が必要とされたため、こうした言わば「予備作業」に費やす時間が増え、「本研究」に移行する時期が相対的に遅延してしまった。そのため、研究計画の後半時期に集中的に訳出作業を詰める必要が生まれ、全体的に「押せ押せ」的事態に見舞われ、無理が生じてしまったことは否めない。残された研究期間を有効に使い、可及的速やかに計画自体を進行させ、最大限の成果を引き出す工夫と努力が必要とされよう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画を成功裏に終了させるべく、これまでの作業で施し得た重要度の順位に従って順次訳出を行い、かつそれぞれの聖徒(ナーヤナール)につき、個人別に歴史性の検証と宗教史的・文学史的意義を吟味していく。この作業を最後まで怠らず進めていく。それにより、ナーヤナールと称される一群の人々の役割と重要性が浮き彫りになるはずである。 上述の地道な作業と並んで、これまでの研究計画の一つの総括としての研究成果発表を学会において行うことを期したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に関わるものとして年度末近くに行った外国出張により、年度分として配分されていた資金の残額をすべて使い切るものと試算していたところ、思いのほか支出額が試算内にとどまったため、38076円の差額が生じてしまった。すでに年度末だったことと、緊急性に乏しい支出は無意味と判断したため、次年度に繰り越すかたちで処理することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に繰り越された分については、当該年度配分予定の研究資金に加え、本研究に関わる外国語資料の購入費用に充てて有効に処理する所存である。
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