研究実績の概要 |
本研究計画最終年度は、2014年度出版の共著 Concise History of South India (Noboru karashima ed., Delhi: Oxford University Press)、および単著『古代インドの思想-自然・文明・宗教-』などに研究代表者(山下博司)が記述・公開してきた当該文献の歴史的背景をじゅうぶんに踏まえつつ、『ティルットンダル・プラーナム』(いわゆる『ペリヤプラーナム』)の重要部分につき継続して訳出作業をおこなった。本研究対象である南インドのヒンドゥー教・シヴァ派の宗教実践について、ディアスポラにおけるシヴァ派アーガマ儀礼の調査や南インド・ニールギリの敬虔なシヴァ信者であるバダガ族の宗教調査などによって多様な視点・角度から随時参照に供し、総合的に成果に反映させるよう努めた。併行して当該作品の歴史的・社会的背景を分析する作業も進めてきた。これらは当該文献を宗教史的に的確に位置づけ、その意義と役割を同定するのに役立つであろう。 本研究計画に沿った和訳を含む最終成果は、目下のところ取り纏め中であるが、年度内にも纏まったかたちで出版および公開すべく鋭意準備作業を進めつつある。背景に関わる研究成果ないし副次的な成果物については、最終年度およびそれを待たずしてそのつど公開に努め、すでに出版済みのものも少なくない。本研究は中世タミルナードゥ地方の帰依信仰(Bhaktism, devotional Hinduism)の展開をシヴァ派を軸に検討するもので、来るべき研究成果の公開によって、とくに日本のヒンドゥー教研究に対し一つの重要な貢献を果たすことになるであろう。
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