研究課題/領域番号 |
23520066
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
和田 壽弘 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00201260)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ガンゲーシャ / 定動詞語尾 / ウダヤナ / 否定辞 |
研究概要 |
ガンゲーシャ著『タットヴァ・チンターマニ』「言語論の章」「定動詞語尾節」を8つの部分に分割し、その内の「(c)ミーマーンサー説へのニヤーヤ学派の反論」「(d)『ラトナコーシャ』の説」「(e)『ラトナコーシャ』の説への反論」という3つの部分の英語訳と分析を出版した。さらに、新ニヤーヤ学派の言語認識理論を扱うので、ミーマーンサー学派と文法学派の理論との比較が必要であり、これについて東海印度学仏教学会の学術大会で発表した。 定動詞語尾の意味に関するガンゲーシャの結論は、最終部分である「(h)ニヤーヤ学派説の詳説」においてもその全体が明確に述べられてはいない。8つの部分に述べれらた主張の中で彼が否定しなかったものが、彼の結論に含まれるという仮説の下に、結論の「全体像」を構成して、ニューデリーで開かれた「第15回世界サンスクリット会議」で発表した。 14世紀のガンゲーシャに先行する11世紀のウダヤナの『否定辞論頌』(Nan-vada-karika)の写本が3年ほど前に発見され、真作問題も含めて、英語訳し分析する作業を始めた。写本を発見したウトカル大学(インド)S. ダシュ講師とのこの共同作業のために、研究代表者がウトカル大学に出向いた。このテキストは全体で60頌あるが、2人の協働により第24頌までの英語訳と分析の原稿を準備中である。もしこのテキストがウダヤナの真作であると証明されたならば、従来では16世紀初頭のラグナータが主張したとされていた、非存在に関する諸理論の多くが11世紀に遡ることができる事になる。初期の新ニヤーヤ学派の言語理論の形成過程に光を当てる事となる。 シャシャダラ著『ニヤーヤ・シッダーンタ・ディーパ』とマニカンタ著『ニヤーヤ・ラトナ』のテキストデータベースを作成しているが、前者はほぼ終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析対象テキストである「定動詞語尾節」の英語訳と分析は順調に進み、また、ウダヤナ著『否定辞論頌』の英訳・分析も順調である。データベースの作成状況も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
「定動詞語尾節」の残りの「(f)文法学派による反論」「(g)ニヤーヤ学派の反論」「(h)ニヤーヤ学派説の詳解」という3つの部分についての作業を進める。また、ウダヤナ著『否定辞論頌』については、ウトカル大学のダシュ講師との共同研究によって、英語訳と分析を完成させる。ただし、現在原稿を準備中の第24頌までは、比較的順調に作業が進んだが、第25~60頌はミーマーンサーの祭式理論を扱っており、これまでに知られていない術語を含むので、それらの解明のために海外の研究者との共同作業がさらに必要となるかも知れない。
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次年度の研究費の使用計画 |
ウダヤナ著『否定辞論頌』の英語訳作成と分析については、ダシュ講師との連携が欠かさないので、彼を名古屋に招へいするか研究代表者がウトカル大学(あるいは本年2月より有期で赴任したインドネシアのマヘンードラダッタ大学)へ赴くことを計画している。 データーベース公開については、ハーバード大学の P. パティル教授と意見交換に必要がある。彼を名古屋に招くかハーバードに赴くかを検討する。
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