研究課題/領域番号 |
23520066
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
和田 壽弘 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00201260)
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キーワード | 国際研究者交流・インド / ガンゲーシャ / 定動詞語尾 / ウダヤナ / 否定辞 / 新ニヤーヤ学派 / 言語哲学 |
研究概要 |
(1) ガンゲーシャ著『タットヴァ・チンターマニ』「言語論の章」「定動詞語尾節」の8つの部分の内、「(f)文法学派の反論」「(g)文法学派に対するニヤーヤ学派の反論」という2部分の英語訳と分析を国際的な学術誌に発表した。 (2) 定動詞語尾の意味に関するガンゲーシャの結論を、8つの部分に述べれらた主張からその「全体像」を構成して、平成23年度末にニューデリーで開かれた「第15回世界サンスクリット会議」で発表したが、この発表原稿を改良して国際的な学術雑誌に投稿した。 (3) 『否定辞論頌』(Nan-vada-karika)の写本の英語訳を平成23年度に終えたので、平成24度は分析と解説とをする作業を始めた。本写本の共同研究者であるウトカル大学(インド)S. ダシュ講師は、2012年2月から2年間の予定でインドネシア・バリ州にあるマヘンドラダッタ大学に出向しているので、彼との共同作業のために、研究代表者がマヘンドラダッタ大学に出向いた。この共同研究によって、写本の奥付には作者がウダヤナであると記載されているが、11世紀に活躍した有名なウダヤナではないことは解明できた。作者は、初期新ニヤーヤ学派の時代に当たる12世紀のオリッサに実在した別のウダヤナである可能性を見出したが、未だ断定するに十分な根拠に達していない。また、この写本のテキストと近い関係にある、16世紀初頭のラグナータが著した『否定辞論』(Nan-vada)との対照表を作成し、両テキストの関係を考察する基礎を築いた。 (4) (3)の成果を理解する前提となる否定辞に関する意味論について、国内学会で発表した。 (5) 初期新ニヤーヤ学派の時代に属する『ニヤーヤ・シッダーンタ・ディーパ』と『ニヤーヤ・ラトナ』とのテキストデータベースを作成しているが、前者は終了し、後者は入力を終えて校正中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 分析対象テキストである『タットヴァ・チンターマニ』「定動詞語尾節」の英語訳と分析は順調に進み、8つの部分の内7つについては完了し、その成果は平成23・24年度に2本の論文として国際的評価の高い記念論集および学術誌に掲載された。 (2) 分析成果の一部を国際会議で発表し、この原稿を修正の上国際的に評価の高い学術誌に投稿し、受理された。 (3) インド人研究者のダシュ氏と共同で推進しているウダヤナ著『否定辞論頌』(Nan-vada-karika)の英訳・分析も順調であり、最終年度である平成25年度中に共著単行本として出版できる見通しである。 (4) データベースの作成状況も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
「定動詞語尾節」の中で、最後で最も大きい部分である第8部分「(h)ニヤーヤ学派説の詳解」の英語訳と分析の作業を完成させ、国際的な学術誌に投稿する。また、ウダヤナ著『否定辞論頌』については、マヘンドラダッタ大学(インドネシア・バリ州)に出向中のダシュ講師との共同研究を進め、英語訳と分析を完成させ、共著の単行本として出版する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) ウダヤナ著『否定辞論頌』の英語訳作成と分析については、マヘンドラダッタ大学(インドネシア・バリ州)ダシュ教授との連携が欠かせないので、彼を名古屋に招へいするか研究代表者がマヘンドラダッタ大学へ赴くことを計画している。 (2) データーベース公開については、ハーバード大学の P. パティル教授と意見交換する必要がある。彼を名古屋に招くかハーバードに赴くかを検討する。 (3) 『否定辞論頌』に関するダシュ氏との共同研究の成果を共著単行本として印刷するための費用が必要となる。
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