南朝仏教学の研究の大きな意義を踏まえ、またその領域での『大乗四論玄義記』の資料的価値を重視し、あわせて、『大乗玄論』、その他の資料を用いて、南朝仏教学のいくつかの側面に光を当てたいと考えた。 『大乗四論玄義記』のテキスト研究の成果として、すでに慧均撰・崔鈆植校注『校勘 大乗四論玄義記』(金剛学術叢書2、金剛大学校仏教文化研究所、2009年6月)が刊行されたので、写本の研究についてはほぼ終わったといえる。そこで、とくに「仏性義」の現代語訳と注釈研究に取り組んだ。 研究の方法としては、(1)『大乗四論玄義記』は大部の著作なので、特に「仏性羲」についての現代語訳と注釈研究を進めること、(2)『大乗四論玄義記』「仏性義」について詳細に内容を分析した研究論文を発表すること、(3)『大乗四論玄義記』「仏性義」を研究する際には、『大乗玄論』「仏性義」、『涅槃経遊意』、元暁『涅槃宗要』、『三論略章』などの著作との比較研究を行なうこと、(4)その他、南朝仏教学に関するテーマについて、積極的に研究し、研究論文を発表することである。 その成果として、(1)日本印度学仏教学会や海外の学会で、『大乗四論玄義記』に関する研究発表を行ない、その成果を数篇の専門の論文として刊行した。(2)南朝仏教学に関する研究成果として、『法華文句』、『法華玄義』の訳注研究を出版した。(3)南朝仏教学の重要人物である道生、法雲、慧思、吉蔵などの思想研究をすすめ、論文を発表した。(4)南朝仏教学に関するこれまでの研究の集大成として、筆者の論文集を刊行した。
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