研究実績の概要 |
平成26年度(本研究課題四年目)は、前年度「実施状況報告書」の「12. 今後の研究の推進方策 等」で翌年度に推進する予定としていた「思想研究」を行った。具体的には、アシュヴァメーダの祭式思想が後世の哲学(特にヴェーダーンタ学派の一元論思想)に結びつく重要モメントというべき『ブリハッドアーラニヤカ・ウパニシャッド』冒頭節(1.1.1-2)のテキスト形成史を明らかにした。またその背景に、馬をめぐる観念・思想の変遷があったという考察を加え、日本印度学仏教学会学術大会(武蔵野大学)において口頭発表を行った(その成果は、平成27年6月にタイ(バンコク市)で行われる 16th World Sanskrit Conference でも発表する予定である)。 一方、平成25年度の研究課題としていた「文学研究」の成果を、平成26年8月にクロアチア(ドゥブロブニク市)で行われた 7th Dubrovnik International Conference on the Sanskrit Epics and Puranas 発表した。そこでは論題 “The Evolution of the Kusha-Lava Episode: Its Origin, and Variations in the Epic and Post-Epic Texts”のもと、『ラーマーヤナ』の最終巻や『パドマ・プラーナ』、『ジャイミニーヤ・アシュヴァメーダ』など多くの文学作品に見られるラーマの二人の息子「クシャとラヴァ」の人物像が、アシュヴァメーダの祭式に参加する「二人のヴィーナー奏者」を下敷にし構想されたことを明らかにした。 最後に、本研究の一、二年目の課題とした「儀礼研究」の付帯資料とする予定である『ヴァードゥーラ・シュラウタ・スートラ』題11章の新校訂テキスト作成は、完成間近な段階にまで進めることが出来た。
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