研究課題/領域番号 |
23520076
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研究機関 | 公益財団法人中村元東方研究所 |
研究代表者 |
田中 公明 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 研究員 (00171744)
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キーワード | 仏教図像 / チベット仏教美術 / サンスクリット密教文献 |
研究概要 |
24年度は、創建当初(15世紀)の曼荼羅が残存するネパール・ムスタン地方のローマンタン・チャンパラカンの壁画を調査し、未比定の曼荼羅すべての同定に成功するなど、大きな成果があった。その成果の一部は、昨年8月25日に石川県立歴史博物館で開催された国際シンポジウム「チベット美術の過去現在未来」の席上(日本語)と、10月に北京市順義区で開催された「第五届西蔵考古与藝術国際学術討論会」の席上で発表(英語)した。 いっぽうナーガボーディの『秘密集会曼荼羅二十儀軌』の原典研究は、すでに全テキストのローマ字化を完了し、24年度中に刊行された1篇と、25年度中に刊行予定の2篇の論文にまとめられた。 インド・チベット・ネパールで撮影した写真のデジタル化と図像データベースは、研究代表者がチベットで撮影した写真すべてのデータベース化を完了した。将来的には研究代表者が副会長を務めるチベット文化研究会を通じて公開することを検討している。 英文校閲費の助成を受けて進めてきた、CGを用いたチベット系曼荼羅の図像データベース『曼荼羅グラフィクス』(山川出版社)の英語版は、本年3月にカトマンドゥのVajra Publicationsから、Mitrayogin's 108 Mandalas, An Image Databaseとして刊行された。 研究代表者の博士論文『インドにおける曼荼羅の成立と発展』(春秋社)の英訳作業は、24年度中に第2章までの英訳草稿が完成し、第1章までの英文校閲が完了した。この作業は25年度も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネパールのローマンタン調査は、予想以上の成果を挙げ、23年度以来の課題であったチベット系曼荼羅の図像データベースの英語版も刊行された。しかし博士論文の英訳作業は、英文校閲者が多忙のため、予定よりも遅れている。ただし同著の英文校閲は、サンスクリット・チベット・古典漢語の知識を有するNative Speakerでないと、正しく点検できないので、校閲者の交代等は考えていない。インド・チベット・ネパールで撮影した写真のデジタル化と図像データベースは、比較的点数が少ないネパール撮影の写真を優先的に進めているが、すべてのデータベース化には、まだ時間を要すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
25年5月に行った米国カリフォルニア州の調査では、先に図像データベースを刊行したミトラ100種曼荼羅集の別のセットを実見し、その詳細なデジタル化データを入手することができた。本年は、23年に調査した豊岡市日本モンゴル民族博物館所蔵の資料等とあわせて分析を行い、25年7月にウランバートルで開催予定の国際チベット学会での発表を予定している。いっぽう24年の調査で、収蔵庫に収容されて実見できなかったインド・マディヤプラデシ州ギャラスプルの仏塔四仏については、本年秋に、インドの他の仏教遺跡や研究機関訪問と合わせて、再度調査を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費としては、すでに終了した米国カリフォルニア州調査に加え、ウランバートルで開催予定の国際チベット学会参加、秋に予定しているインド調査での使用を予定している。チベット自治区については、政治情勢が好転せず、外国の研究者が自由に調査できない状況が続いているので、現在のところ実施の予定が立たない。翻訳校閲費に関しては、現在まで、ほぼ3分の1が完了している研究代表者の博士論文『インドにおける曼荼羅の成立と発展』の英語版に、その大半を投入する予定である。この他、書籍や文献のデジタル化CD、ソフトウェアなどは、今後の研究の進展と必要に応じて適宜購入することにしたい。
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