インドで7世紀頃に成立した『カーランダ・ヴューハ・スートラ』(KV)は、観自在菩薩の説話を述べた経典であり、インドにおける観自在信仰の展開を知る上で貴重な資料である。本研究ではKVの梵語テキスト・データベースの作成及び翻訳研究を行うとともに、梵文と、蔵訳及び漢訳との比較研究を行った。またKVをもとに15世紀頃にネパールで編纂された『グナ・カーランダ・ヴューハ・スートラ』(GKV)とKVとの比較研究も行った。 その結果、GKVは、ネパールのスヴァヤンブー仏塔に関する地域的信仰や地域的テキストである『スヴァヤンブー・プラーナ』、さらにヒンドゥー教の強い影響を受けていることが明らかとなった。
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