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2014 年度 実施状況報告書

「もの」と「場所」の霊性の生成に関する宗教人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520082
研究機関九州大学

研究代表者

長谷 千代子  九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (20450207)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2016-03-31
キーワード国際情報交換(中国雲南省) / 文化人類学 / 宗教 / 観光
研究実績の概要

本研究の狙いは現代的状況において「もの」や「場所」の霊性が生成するメカニズムの解明を目指すことである。方法としては、A.徳宏タイ劇の劇神と舞台、B.今津人形芝居の人形と舞台、C.徳宏上座仏教の仏像と上座仏教寺院、D.聖遺物と仏塔、E.観音像と観音寺、F.シャーマンとシャーマンの集会、という事例についてデータを収集し、それらを総合的に考察して結論を導き出す。
このうち、Aについては前年度までに調査を終え、一定の成果も発表している。Bについては地域住民との話し合いが長引き、年度内の出版はできなかったが、原稿はすでに完成している。Cについては、近年徳宏州でも人気が高まりつつあるチベット仏教の家庭集会に参加する機会があり、上座仏教のみならず、大乗仏教やチベット仏教も含めて考察する方向に展開している。この成果についてはほぼ調査を終え、次年度に国際宗教史学会(IAHR)で発表する予定である。E「観音像と観音寺」については、2014年5月に国際人類学民族科学連合IUAESで発表し、英語論文を準備中である。DとFに関しては、引き続き調査を行っているが、特にFについては期間内に成果発表までこぎつけることが難しくなりつつある。ただし、Fはもともと実際にシャーマンの儀礼などを参与観察できる可能性は低かったため、想定内である。
理論的総括に向けた仕事としては、タイラーの『原始文化』の日本語訳をほぼ完了し、アニミズム論に対する理解を深めた。翻訳書籍は次年度出版予定である。霊性が生成するメカニズムの理論化については、多くの理論書を読み、霊性とものや場所を結びつける物語の存在がカギを握るという見通しを得ている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の目標は、本来の計画では①事例研究全般について理論研究に重点を移し、いくつかの成果を国外に発表する、②補足的な調査や資料収集を随時行なうことだった。①については、IUAESで発表することができ、次年度もIAHRでの発表を予定し、英語論文の原稿も作成している。②についても、2,3月に一月近く現地調査を行うなど、どちらもほぼ順調に達成したと言える。
ただし問題は、個々の事例研究が独自の展開をしたり、調査の進展の中でこれまでとは違うものの見方をするようになったりしたため、どのような形で諸事例全体を包括して理論を作り上げるか、やや見通せなくなってきていることである。研究当初の感触では、各事例は具体的な「もの」や「場所」そのものについての考察につながるはずであったが、現時点ではそれらは背景に退いて、「物語性」や全体のなかの「ポジション」などの概念のほうが重要になりつつある。
これは研究の進展に伴って新たに得られた知見であり、かつて予想していなかった展開になること自体は決して悪いことではないと考えているが、一つの科研のプロジェクトとしては終わりに差し掛かっている時期に、まとめる方向をやや見失っているという意味ではあまり好ましい状態であるとは言えない。よって、現状をやや遅れていると認識し、早急に考察を深めて、従来の目的と新たな知見とをうまく統合した着地点を見出すようにしたい。

今後の研究の推進方策

もともとの計画では、最終年度の目標は各事例研究を総括した理論研究に取り組み、一冊の本になるように成果をまとめることとなっている。基本的にはこの方向で進める予定である。ただし、各事例研究のうち、Fについては十分な調査時間を確保できる見通しが立たないので研究対象から外し、その代わりにEの研究から展開したチベット仏教の家庭集会の事例を組み込む。これによって、現代の人々がどのような場所で、どのようなきっかけで、どのような「もの」を通じて宗教(特に仏教)に関わりを持つようになるかという視点から、全体を総括する「場所」と「もの」に関する理論の構築を試みたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 現代中国の宗教文化と社会主義2015

    • 著者名/発表者名
      長谷千代子
    • 雑誌名

      アジアの社会参加仏教:政教関係の視座から

      巻: 0 ページ: 105-126

    • 査読あり
  • [学会発表] An Analysis on Guanyin Cult as “”Sinicization’ in a Multi-ethnic Area of Contemporary China: from the viewpoint of “ortho-syncretism”2014

    • 著者名/発表者名
      長谷千代子
    • 学会等名
      International Union of Anthropological and Ethnological Sciences
    • 発表場所
      千葉幕張メッセ
    • 年月日
      2014-05-15

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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