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2011 年度 実施状況報告書

聖遺物の複製化・商品化をめぐるマテリアル・イスラームの研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520083
研究機関高崎経済大学

研究代表者

小牧 幸代  高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (20303901)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードイスラーム / 南アジア / 聖遺物 / 預言者 / 聖者 / 聖地 / 聖典 / 儀礼
研究概要

本研究の目的は、南アジアのムスリム多住地域で観察されるイスラームの聖遺物の複製化・商品化現象が、どのような文化的・社会的・政治経済的背景をもつものであり、またイスラームという枠組みの中でどのように位置づけられうるものであるのかを、イスラームの物質的次元に注目することの重要性を含意した「マテリアル・イスラーム」という新しい研究視角を開拓・構築することで解明することにある。この目的のため、研究期間の初年度にあたる本年度は、これまでに収集した膨大なデータの整理と分析、および参考文献の収集・読解と分析枠組みの精緻化に取り組んだ。 まず、フィールドデータとしてはインド(デリー、ニューデリー、アジュメール、ハイデラバード、カシュミール)、パキスタン(ラホール、カラチ)、バングラデシュ(ナラヤンガンジ)の聖遺物ならびに聖遺物グッズに関する基本情報、画像(静止画・動画)、現物、参与観察記録、聞き取り調査記録がある。これらの事例を数項目にわたってエクセル入力し、データベース化を試みた。他方、現地語資料には多数の小冊子やローカルな雑誌・新聞の記事などがある。これらを翻訳し、エクセル入力し、データベース化をおこなった。以上、2種類のデータの整理とデータベース化を通じて、南アジアにおけるイスラーム聖遺物信仰の特徴を浮き彫りにしうる複製化・商品化の事例の一覧化ないしカタログ化が進行している。 次に、参考文献について、特に文化人類学・宗教学・歴史学の分野を中心に収集と読解を進め、上記の事例の分析枠組みを精緻化するとともに、マテリアル・イスラームの理論的枠組みの開拓・構築に専心した。この過程でイスラーム以外の諸宗教における聖遺物信仰の事例も参照し、比較分析を可能にするためのデータベース化に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、データの整理と分析に予定よりも時間がかかったこと、南アジアの政情が不安だったことなどから、海外における現地調査・文献調査を実施することができなかった。しかし、有益な調査のためには事前のデータベース化の作業は不可避であるため、複数の協力者を得て、複雑な作業をいっそう効率的に進めたい。事例の分析枠組みとマテリアル・イスラームの理論的枠組みの開拓・構築のほうは、予定以上に順調に進んでいる。次年度以降の成果発表で一般に公開し、少しずつ社会還元していきたい。

今後の研究の推進方策

本年度は、フィールドデータ・現地語資料のデータベース化すなわちデータの一元化と、参考文献の収集・読解を通じて、事例の分析枠組みを精緻化するとともにマテリアル・イスラームの理論的枠組みの開拓・構築に専心した。データの整理と分析およびデータベース化の作業は、最優先事項だが時間がかかるため、本年度分の作業は複数の作業従事者とネイティヴ知識人との連携を深めることで迅速化に努めたい。 他方、イスラーム以外の聖遺物信仰に関する文献を読解する過程で、ヨーロッパ・キリスト教世界の聖遺物信仰は、イスラーム世界のそれと似ているようで非常に異なる特徴と性質をもつことが分かってきた。とはいえ、既存の宗教研究は欧米のあるいは欧米で訓練を受けた研究者・知識人の観点からなされてきたため、類似点や相違点の抽出にバイアスの介在は否定できない。また、マテリアル・イスラームの理論的枠組みを完成させるためには、カトリック世界とプロテスタント世界、イスラーム原理主義と民衆イスラームのそれぞれにおいて、聖性と物質性の関係をめぐる観念と表現が具体的にどのようであるかを明らかにする必要がある。このため、今後は南アジアで補完的現地調査を実施する一方で、カトリック世界(イタリア・フランス)ならびにプロテスタント世界(ドイツ・イギリス)で現地調査と文献調査・資料収集を実施し、聖遺物信仰を切り口とした比較宗教研究の実現可能性を探り、マテリアル・イスラーム理論を完成させたい。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、1)これまでに収集したデータの整理と分析、2)補完的現地調査、3)他宗教、とくにキリスト教の聖遺物信仰にかかわる現地調査と文献調査・資料収集、4)参考文献の読解と分析枠組みの精緻化に取り組むことで、マテリアル・イスラーム研究を深める。データの整理と分析は国内で、補完的現地調査はインドとパキスタンで、キリスト教の聖遺物信仰調査はカトリック世界(イタリア・フランス)ならびにプロテスタント世界(ドイツ・イギリス)でそれぞれ実施する。補完的現地調査とキリスト教関連調査の結果を整理・分析し、データベース化することで、地域や国による特徴・性質、相違点・共通点などを比較分析が可能なレベルにしておきたい。また、このデータベースに基づいて国内の大学・研究機関で研究発表をおこなうほか、参考文献のさらなる収集と読解を通じて、解釈枠組みの精緻化を図りたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] コンタクト・ゾーンとしての聖遺物信仰:南アジア・ムスリム社会の事例から2012

    • 著者名/発表者名
      小牧幸代
    • 雑誌名

      田中雅一編『コンタクト・ゾーンの人文学』晃洋書房

      巻: 第3巻 ページ: 未定

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公開日: 2013-07-10  

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