研究課題/領域番号 |
23520083
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
小牧 幸代 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20303901)
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キーワード | イスラーム / 南アジア / 聖遺物 / 預言者 / 聖者 / 聖地 / 聖典 / 儀礼 |
研究概要 |
研究期間の2年目となる平成24年度は、イスラーム聖遺物信仰に関連してこれまでに収集・蓄積してきた資料・情報を整理・分析するとともに、継続的な文献研究を通じて、論文作成に取り組んだ。また、初年度に実施できなかった海外における現地調査・文献調査にも、予定以上に十分に取り組むことができた。具体的には、インド・パキスタンにおいてスンナ派の聖者および聖遺物信仰調査、イランにおいてシーア派のイマームザーデおよび聖遺物信仰調査、さらにイタリア、フランス、ドイツにおいてイスラームの鏡像としてのカトリシズムの聖人・聖女および聖遺物信仰調査をおこなうことで、南アジアと西アジア、さらにヨーロッパの聖遺物をめぐる宗教事情・信仰状況に関する比較分析のための重要な手がかりとなる資料・情報を収集した。結果として新しい貴重なデータを多く収集することができ、聖遺物を手がかりとした「マテリアル・イスラーム」の分析視角の開拓・構築に大きな前進をみた。とくに、ヨーロッパ・キリスト教の聖遺物信仰のデータを収集し、イスラーム聖遺物信仰との比較が可能になったことは、想像以上に貴重かつ重要な収穫であった。なお、これによって平成24年度までに収集・蓄積できた聖遺物関連の資料・情報は、国別に見るとインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、インドネシア、中国、イラン、トルコ、イタリア、フランス、ドイツとなり、宗教別に見てもイスラーム、仏教、キリスト教という「三大世界宗教」をカバーすることとなった。今後のデータの整理・分類は、地域や宗教などによる特徴・性質、相違点・共通点などの比較分析が可能となるような基礎資料集の作成を念頭に置いたものにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、フィールドデータと現地語資料のデータベース化、および文献研究が中心となっていたが、本年度は、初年度に実施できなかった海外における現地調査・文献調査に十分に取り組むことができた。とくに、ヨーロッパ・キリスト教世界の聖遺物信仰のデータを収集し、イスラーム聖遺物信仰との比較が可能になったことが、研究の進展の上で非常に有益かつ有効であった。結果として、聖遺物を手がかりとした既成宗教における聖性と物質性の関係が広がりと深みをもって理解できるようになり、「マテリアル・イスラーム」の分析視角の開拓・構築に大きな前進をみることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に実施した海外調査を通して新たに収集することができたフィールドデータならびに現地語資料を整理・分類し、データベース化することで、「三大世界宗教」における聖遺物信仰の比較研究が可能となる基礎資料集の作成に従事する。そして、それらのなかでのイスラーム聖遺物信仰の特徴や独自性、イスラームにおける聖遺物ないし聖なるモノ信仰の位置づけを明らかにする。また、さらなる参考文献の収集・読解を通じて、個々の事例の分析をいっそう推進していく。これらの作業を積み重ねることで、マテリアル・イスラーム理論の完成度を高める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、1)これまでに収集したデータの整理と分析、2)補完的現地調査、3)参考文献の読解と分析枠組みの精緻化に取り組むことで、マテリアル・イスラーム研究をさらに深める。なお、補完的現地調査はバングラデシュとイギリスで実施する。そして、4)補完的現地調査の結果を整理・分類し、データベースに追加することで、聖遺物データベースをいっそう充実させる。そして、その成果を学会発表と論文執筆によって公開し、社会還元を図りたい。
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