本研究では、近代ドイツ宗教思想史研究に社会史的な視点を導入するために、従来の思想史研究の前提であった「著者‐読者」ではなく、「著者‐編集者(出版社)‐読者」という関係モデルを提示した。なぜなら、近代以後の世界では思想もまた市場化し、編集者、あるいは出版社の媒介なしには、思想を知的市場にもたらすことはできなくなったからである。またこのような仕組みの中では、思想を市場に届けるためには、出版社が大きな力をもつようになり、編集者や出版社の思想が、著者に大きな影響力を与えるようになるからである。そのことを近代ドイツの2つの宗教出版社の資料をサンプルに解明した。
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