研究課題/領域番号 |
23520088
|
研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
櫻井 治男 皇學館大学, 社会福祉学部, 教授 (00087735)
|
キーワード | 近代の伊勢神宮 / 御師 / 大物忌父岩井田家 / 神宮大麻 / 参宮と宇治山田 / 伊勢信仰 / 社会変動と神道 |
研究概要 |
当年度の研究計画に従い次の①~⑥を実施した。①未調査資料の確認と研究活用の利便性を高めた目録化と資料のデジタル化の作業を進め、資料調査カード約3000点の処理を行った。その作業方法は、調査カードを用い、一点ずつ資料の年代・作成者・形態・内容を記入し、それを表計算ソフトを用いて処理し、併せて資料に番号を付すもので、作業進行のためにアルバイトを雇用した。②収集資料の解読と研究推進のための内容把握・整理については漸次進め、資料所蔵者の了解を得て伊勢市でほぼ毎月、12回の資料調査と一部写真撮影及び特殊用紙封筒を用いた保管整理を進めた。③岩井田家所蔵以外の御師資料の調査については、新発見の文書史料の位置づけのため埼玉県立公文書館を中心に調査を実施し、併せて三重県庁・三重県神社庁所蔵文書、国立国会図書館等の所蔵資料確認調査を進めた。 ④御師制度廃止後の御師の状況と旧御師の檀家地域との関係状況についての調査は、伊勢市内及び埼玉県を対象に実施し、特に岩井田家の旧檀家地である埼玉県久喜市・加須市等では近年まで伊勢講活動があり、岩井田家との関係性が戦前期まで継続されていたことを確認するなどの成果をあげ、さらなる確認作業のための準備を進めることができた。⑤研究成果の公表として、平成24年度神道宗教学会学術大会にて「御師制度の廃止と伊勢信仰―岩井田家資料とその周辺―」のテーマで研究代表者・連携研究者・研究協力者5名でパネル発表を行った(平成24年12月2日・於國學院大學)。 ⑥研究打合せ会と勉強会等の開催として、伊勢市での調査時期に併せて随時実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3か年の計画で、次の5点を目的としている。①岩井田家資料の再確認と研究資料(文書)のデジタル化及び整理、②御師制度の廃止後の岩井田家と旧檀家との関係解明、③伊勢神宮の祭祀組織解体と岩井田家の役割の位置づけ、④伊勢(宇治・山田)における御師廃止と当該地域への影響内容の解明、⑤岩井田家未公開資料の公開方法の提案協力。 上記の内、①について資料調査とデータ整理(文書・資料カード採り、作成カードデータの電子化)は進めているが、未公開で所蔵されてきた資料群が当初の予想を超える多数の点数にのぼり、これまで約5000点の書誌等データを整理してきたが、なお数千点の存在が予想され、この点では研究のための基礎資料の全体把握に時間を必要とすることが課題である。②は、調査済資料及び岩井田家より発信された書簡類が、受け取り側である旧檀家地域で残され、それらの一部が公立文書館などへ移管され、保管・整理・公開されており、これらの解読を通して両者の関係が少なくとも戦前期まで継続されていること、また戦後期においても岩井田家との直接的な関係は薄れるが、地域において旧来の講仲間での伊勢信仰が継続されているなど現地調査の成果をあげることができている。また、これらの成果を踏まえ、計画通り学会の学術大会でパネル発表を行った点は研究が順調に推移しているからと捉えている。 ③④については、岩井田家以外の御師研究や祠職の変容についての研究が、近代以降を対象としたものが少なく、本研究がその先鞭をつける可能性が高くなっており、慎重に研究を進める必要があり、未だ十分な研究展開を図るところまで至っていない点が課題である。 ⑤については、所蔵者の意向を確認しつつ資料公開の方法について検討を進めており、この点では概ね順調であるが、どの資料をどのように公開するかについての課題は残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度が研究の最終年にあたることころから、特に次の4点を中心に研究活動を進め、全体のとりまとめを行う予定である。 ①岩井田家所蔵文書のカード採りを終了するために集中的に調査を実施する。資料目録を作成し、そのなかから重要度に応じて写真撮影を進め、資料の全体像を明らかにする。また、文書資料の将来への保存という観点から適切な保管方法のために、中性紙封筒を活用した調査作業と保存対応作業を進め完了する。 ②岩井田家と旧檀家地域との関係を明らかにするために、これまでの調査研究でコンタクトのとれた地域の補足調査を実施するとともに、文献資料の解読などにより両者の関係を跡付ける。 ③未公開資料の公開の方策については、所蔵者の意向を再確認しつつ、実物の一部公開とこれまで行ってきた資料目録の公表を実施する。 ④多様な資料の内容分類を行い、資料・文書資料目録を取りまとめ、当該資料が更なる活用に資するように整える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究経費支出の多くは旅費である。その内訳として、岩井田家(伊勢市)の所蔵文書・資料調査及び旧檀家地(埼玉県等)での補充調査、研究成果発表を予定している学会への参加にかかる経費にあてる計画である。連携研究者・研究協力者の活動による推進・研究完了を図っており、居住地との関係から旅費の比重が高くなる。 また、研究成果の公表として、未公開資料の特別展示会を計画しており(資料所蔵者の了解済)、そのための会場費、図録作成・ポスター作成にかかる印刷費、パネル作成費、展示会の準備及び期間中の補助としてアルバイトの雇用、資料提供への謝金等にかかる経費の支出を予定している。 さらに、文書資料整理のための消耗品購入を必要としており、(B-A)の経費をその購入費用に補填することを考えている。資料目録の公開にかかる経費も使用計画として立てている。
|